2015年7月13日月曜日
シャーヒ・ズィンダ廟群11 トマン・アガのモスク
シャーヒ・ズィンダ廟群では、26:アミール・ブルンドゥク廟に接して27:トマン・アガのモスクがある。
27:トマン・アガのモスク TUMAN AGA MOSQUE 1405-06年
『中央アジアの傑作サマルカンド』は、15世紀初め、シャヒ・ジンダ廟群の上部分にはアムール・チムールの最も若い妻の廟が建てられた。シャヒ・ジンダ廟群の建物で、トマン・アガの名がつけられているのは廟、モスク、フジュラ(メドレセ又はハナカにある学生部屋)と上のチョルタックである。
トマン・アガ廟は葬儀用モスクと同時に建設された。トマン・アガ廟の南壁は、モスクの北壁として使用された。昔、部分的にモスクと接続したフジュラはアムール・ブルンドゥク廟に増築された。
彼女はカザン・ハンの孫で、1378年にアムール・チムールと結婚し、娘を産んだ。チムールが亡くなり、彼女はジェイフ・ヌル・アドディヌアガと再婚したが、彼が亡くなってからはゲラト市に渡った。彼女はホラサン市で亡くなり、クサイヤ村で埋葬されたという。
両端の修復されたような文様帯はともかく、それ以外はモザイク・タイルで埋め尽くされている。
イーワーンの上
2色のアラビア文字の銘文は、一重の渦巻く蔓草の地文の上に嵌め込まれている。拡大すると、修復された箇所や、修復されても平らになりきっていないことがわかる。
その下の左右対称の花文は、緑の目立つ大きなロゼットに、渦巻かず、枝を広げる草花文が表されている。
イーワーンの奥行分を占める文様帯には10点星、変形四角形や五角形、六角形が微妙に交差する組紐文によって構成され、それぞれの大きさにあった花文が嵌め込まれている。
左壁面(ピンボケ)帯の文様も細かい植物文。
イーワーン頂部は、八角形と4点星の組み合わせによる組紐文の中に大きなロゼット文が表されている。
扉の上は、モザイク・タイルで、白とオレンジ色でアラビア文字の銘文が、ゆったりと渦巻く一重の蔓草を地文として表されている。オレンジ色の銘文の密なことといったら、わずかの空間にもれなく記さねばという気迫さえ感じるほどである。白い銘文も、2段に記されているように感じる。
トマン・アガ廟には第三のチョルタックが交差している。
チョルタックを出て左側には、トマン・アガのモスクの続きと36:廟(右端)があって、どちらもモザイク・タイルでファサードが埋め尽くされている。
モスクの続きもやはり扉に鍵がかけられている。
イーワーン上部は、先ほどとはまた異なった組紐のある幾何学文で飾られている。
中央少し上に、大きな花文のある10点星、そこから変形四角形や五角形、六角形。そして三角形や菱形などが組紐文で縁取られながら、うまく組み合わされ、両肩と下の2隅には10点星が部分的に現れている。
その下にはアラビア文字の銘文のパネルが2つある。同じ建物ならば、一続きにすればいいのにと思うが、そうはできない章句などが表されているのだろう。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』で深見奈緒子氏は、シャーヒ・ズィンダーにイランで熟成した植物文のモザイクタイルが出現するのは1372年建立のシーリーン・ビカー・アガー廟が最初であるという。
15: シリング・ベク・アガ廟は、現地の説明板には1385-86年となっているが、どちらにしても14世紀後半に建立された廟で、組紐文はなかった。それが、1405-06年に建造のトマン・アガのモスクのモザイク・タイルとの違いで、20-30年の間に、文様の好みが変化したということになるのだろうか。
シャーヒ・ズィンダ廟群10 アミール・ブルンドゥク廟←
→シャーヒ・ズィンダ廟群12 第3のチョルタック
関連項目
ウズベキスタンのイーワーンの変遷
イーワーンの変遷
アラビア文字の銘文には渦巻く蔓草文がつきもの
イーワーンの上では2本の蔓が渦巻く
トマン・アガのモスクには組紐付幾何学文のモザイク・タイル
シャーヒ・ズィンダ廟群1 表玄関にオリジナルの一重蔓の渦巻
シャーヒ・ズィンダ廟群2 2つのドームの廟
シャーヒ・ズィンダ廟群3 アミール・ザーデ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群4 トグル・テキン廟
シャーヒ・ズィンダ廟群5 シャディ・ムルク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群6 シリング・ベク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群7 八面体の廟
シャーヒ・ズィンダ廟群8 ウスト・アリ・ネセフィ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群9 無名の廟2
シャーヒ・ズィンダ廟群13 クサム・イブン・アバス廟
シャーヒ・ズィンダ廟群14 クトゥルグ・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群16 ホジャ・アフマド廟
※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン展図録」 2001年 岡山市立オリエント美術館