2015年8月12日水曜日

レギスタン広場1 ウルグベク・メドレセ


レギスタン広場を囲んで、各時代にメドレセが建てられ、現在も残っている。
『中央アジアの傑作サマルカンド』は、14世紀のモンゴルの迫害により、アフラシャブの生活は麻痺し、サマルカンドは南方に転地した。その中心となったのは、「砂の場所」という意味を持つレギスタン広場であった。
昔はここを運河が流れ、砂と泥が溜まっていた。
アムール・チムールの時代に、レギスタンは技術、貿易の中心としての意味を持つようになった。道が交差している場所に、アムール・チムールの妻トマン・アガによって、ツバリク・フルシャンという商売のドームが建設された。ウルグベクの時代には、レギスタン広場は軍のパレードと法令の宣言のための場所として使用され、1417年からウルグベクはサマルカンドとブハラ、シャフリサブスとギジュドヴァンに、新しい建物の建設を開始した。レギスタン広場の改築のために、トマン・アガの商売ドームを移動させるよう、僧侶の許可を求めたという。

同書は、レギスタン広場は、サマルカンドの精神的な中心であり、建築のシンボルの意味を持たせた新しい建築物も建てられた。最初の建物は、荘重なウルグベクメドレセであった。それは1414-20年に、レギスタン広場の西部に建設されたという。

現在のレギスタン広場。左手がウルグベク・メドレセ
広場の正面からは、1枚の写真に入りきらない。
横から見たウルグベク・メドレセ
正面から見たウルグベク・メドレセ
『シルクロード建築考』は、二階建の間口56m、奥行81mのメドレッセには、玄関内の両側にドームのある2教室があり、2層で二人部屋の28室になって学生を収容していたという。
大イーワーン内はバンナーイによるタイル装飾。
中央の小イーワーン上
ティムールの孫の時代ともなれば、モザイク・タイルであっても、柿色の蔓草と水色の蔓草がそれぞれに渦巻くようになった。
小イーワーン内のムカルナス
モザイク・タイルではなく、様々な形の絵付けタイルを貼り付けているひょっとすると、これは修復タイルで、創建時はモザイク・タイルだったかも。
これはモザイク・タイル。一見絵付けのように見えるが、例えば、コバルトブルーの箇所を細かく見ていくと、色が違っていたりする。

小イーワーンの両側から出入りすることができる。
『イスラーム建築の世界史』は、ティームール朝のもう一つの改革は、マドラサ建築の定型化で、サマルカンドやブハラ、マシュハドなどで互いに似通った建造物が建つ。基本的にはモスク同様、チャハール・イーワーン形式を用い、回廊部を区切って学生用の居室とした。多くは二階建てである。このスタンダード・プランの成立によって、帝国各地に、より早くより多くのマドラサを中心とした公共建築を建設することが可能となったという。
チャハール・イーワーンとは四辺の中央部にそれぞれイーワーンを開いた、4つのイーワーンということ。

中庭から玄関側。
二階建てのフジュラ(学生寮)。かすかに顔を出したドーム(二重殻の外ドームとドラムがなくなってのかな)が教室だったという。
『シルクロード建築考』は、1420年に建てられたウルグ・ベクのメドレッセは、当初イスラム教の学林として開校されたが、のちウルグ・ベク自らも講師となり、また多くの一流学者によって、天文学、数学、哲学などの講義も行われたという。
18世紀の地震によって、二階の部分や教室のドームは崩壊し、ミナレットは3本だけが、かろうじて補強されて余命を留めているという。
『中央アジアの傑作サマルカンド』は、メドレセ内部の30X40mの中庭には、八角形の池があるというが、現在では浅く小さな四角形のものがあるだけで、水も溜まっていない。
北側のイーワーンは中央に出入口がある。
北イーワーンと西イーワーンの間の二階建てフジュラ

西イーワーンの中へ
『シルクロード建築考』は、奥の部屋は冬期用寺院に使用されていたという。
内部は、天井や支柱が水色に塗られていて涼しげ。腰羽目は緑の六角形のタイルが。
水色の六角形のタイルも。

出る前に六角形の穴から外を覗く。向こうにはシルドール・メドレセ


ティリャカリ・メドレセに展示されている古い写真に、何時頃写されたものかわからないが、修復前のウルグベク・メドレセがあった。

レギスタン広場には店舗がひしめき合っている。ウルグベク・メドレセは、2本の塔と玄関の門構えはある程度残っているが、フジュラは1階部分だけになっている。
中庭と西イーワーンねそしてミナレットということになるのかな。

                      →レギスタン広場2 シルドル・メドレッセ


関連項目
ウズベキスタンのイーワーンの変遷
イーワーンの変遷
イーワーンの上では2本の蔓が渦巻く
レギスタン広場3 ティリャカリ・メドレセ

※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「東京美術選書32 シルクロード建築考」 岡野忠幸 1983年 東京美術
「イスラーム建築の世界史 岩波セミナーブックスS11」 深見奈緒子 2013年 岩波書店