2013年9月18日水曜日
ペロポネソス半島4 ミケーネ8 博物館3 渦巻文は様々なものに
ミケーネの考古博物館には、祭祀センターとは別の場所で発見されたと思われるフレスコ画も幾つか展示されていた。展示品の名前を写すのを失念していたために、それがどこから出土したものか、どの時代のものかがわからない。
壁の上部を巡っていたのではないかと思われる連続した渦巻文の文様帯。
同じケースの下に石か焼成レンガに彩色された同じような連続渦巻文が置かれていた。
どちらも渦の中央部には彩色はされているが、文様はない。
石製墓標 円形墓域B出土
作られた時にこんな縦の穴はなかっただろう。おそらく、これが墓碑で、下に黄金製品がたくさん副葬されていることがわからなくなった時代に、何かに再利用されたのだろう。
ここにも連続渦文があった。しかも、一つの渦巻から出た蔓が次の渦に引き込まれるが、中心で向きを変えて渦から脱出し始め、ついには渦は別の渦へと向かって行く。
現在のような穴がなければ、この墓標には縦横各3つ、合計9つの渦巻があったはずで、左右中段の渦巻を見ると、上下だけでなく、右あるいは左から、もう1本の蔓が伸びて、中心で不完全な巴文ができている。その中心の渦巻は、左右上下から4本の蔓が伸びて、中心へ向かい、おそらく不完全な十字文を作っていたことが予測される。
この連続渦文については後日忘れへんうちににて。
下の図は中央の動物に両側からライオンが襲いかかる、弱肉強食図と呼ばれるものかと思っていたが、外側左に振り落とされた人物と、右に剣を持って攻撃態勢にいる人物が描かれているのが妙だ。
ひよっとすると、戦車に襲いかかったライオンに投げ出されたのが左の人物で、中央には戦車とそれを牽いていた馬がいるのでは。剣を持った戦士は、ライオンを飼い慣らして戦車を襲わせ、投げ出された人物のとどめを刺そうとしているのだろうか。
いやそうではないようだ。
『世界美術大全集3エーゲ海とギリシア・アルカイック』は、ライオンはミュケナイ時代の初めからハンターとしてその美術に登場している。そのなかでも古く、円形墓域Bの墓標に刻まれた例では、立ち上がった複数のライオンが牡牛に襲いかかっており、武器を手にした男たちがこのライオンに立ち向かっている。墓標に表現されていることからして、この図像は象徴的な意味をもつものであろうという。
そういわれると、左の投げ出されたと思っていた人物は、飛びかかってライオンに剣で切りつけているようにも見える。
楯 フレスコ
瓢箪形。どうも白地に不揃いな紺色の模様あちこちにあるのを見ていると、当時のミケーネの楯には牛皮を貼りつけていたのではないかと思う。
括れの左側にも渦巻文がありそう。
この瓢箪形楯は後日アテネ国立考古博物館でも見た。
それについては後日忘れへんうちににて。
ミケーネ7 博物館2 土偶← →ミケーネ9 アトレウスの宝庫はトロス墓
関連項目
ミケーネ6 博物館1 祭祀センターのフレスコ画
ミケーネ5 メガロン
ミケーネ4 アクロポリス
ミケーネ3 円形墓域A
ミケーネ2 ライオン門
ミケーネ1 円形墓域B
透きとおるいのち 田上恵美子ガラス展は銀座で
エジプトのコアガラスは
※参考文献
「唐草文様 世界を駆けめぐる意匠」 立田洋司 1997年 講談社選書メチエ
「世界美術大全集3 エーゲ海とギリシア・アルカイック」 1997年 小学館