2015年7月6日月曜日

シャーヒ・ズィンダ廟群9 無名の廟2


23:ウスト・アリ・ネセフィ廟(無名の廟1)の次は24:無名の廟2。

24:無名の廟2 14世紀後半
説明板には、11世紀に建てられた43:タムガチ・ボグラ・ハンのメドレセの基礎の上に建てられたという。
脇に土台のようなものがあるのがその遺構だろうか。
ファサードは補修の青釉タイルが目立つしムカルナスもほとんど装飾が残っていないので、あまり期待できない廟だった。
ところが、玄関内側の壁面を見ていると、
そこに金色の輝きがあることに気付いた。
『世界美術大全集東洋編17イスラーム』は、15世紀のティムール朝に発達したタイ ルの技法の例は、すべてシャーヒ・ズィンデ墓廟群に見ることができる。イランと中央アジアで完成を見たタイルの技法としては、ティームール朝以前から使わ れてきたラスター彩と上絵付のラージュヴァルディーナ彩、14世紀後半から15世紀初期に中央アジアで発達したクエルダ・セカなどが継続して使われた。新 たに発達したモザイク・タイルは、多様な形のタイル小片を組み合わせて装飾文様を表す技法で、諸技法のなかで最も手間がかかるが、完成度の高いものの美し さは格別であるという。
ラージュヴァルディーナはこの廟にあったのだ。
ほらここにも。

反対側の日陰の壁面にも、金の輝きがあった。
ほら

上を見上げてみると、
ムカルナスにもラージュヴァルディーナが輝いている。
ムカルナスの下の壁面にも、ラージュヴァルディーナのタイルがありそう。
上部はよく見えなかったが、アラビア文字の文様帯の地文の一重の蔓草に、少し金箔の残ったところがある。現在では赤い輪郭線の方が目立つが、その内側は藍地になっている。確かにかつては金箔が貼られていた証拠だろう。

外壁は補修タイルが多い。
このアラビア文字の文様帯は欠けた箇所があるので、オリジナルかも。文様帯の地文には一重の蔓草がゆったりと渦巻いていて、タイルの接合部なは丸い花が両端に半分ずつ描かれて、上の蔓草がそこから出ているように見える。
これらの文様は白いアラビア文字と同様に、少し浮き出ている。見た目は異なるが、技法としては、イル・ハーン朝時代のフリーズタイル(13世紀中葉-1275年)のよう。
この蔓草も金色?いや、両側の補修タイルっぽい長六角形や六角形のタイルの金色と比べるとその輝きはにぶい。
外側の文様帯は正方形の絵付けタイル。明らかに補修のもの。
こちらのトルコ・ブルーの盛り上がったタイルの中に嵌め込まれた変形五角形や変形八角形のタイルはオリジナルで、赤い線に縁取られた金色の面が輝いている。金箔を貼って、輪郭にはやはり赤い線がある。

外壁下の腰羽目にあるフリーズタイル。
金箔が貼られたタイルもあるが、ほとんどは金色の盛り上がった線で変形六角形や花文の輪郭を描いたり、中央の宝相華文のような花の5枚の花弁などを描いている。
新しそう。

      シャーヒ・ズィンダ廟群8 ウスト・アリ・ネセフィ廟
                    →シャーヒ・ズィンダ廟群10 アミール・ブルンドゥク廟

関連項目
ウズベキスタンのイーワーンの変遷
イーワーンの変遷
アラビア文字の銘文には渦巻く蔓草文がつきもの
ラージュヴァルディーナ・タイルとは
ラージュヴァルディーナはタイル以外にも
シャーヒ・ズィンダ廟群1 表玄関にオリジナルの一重蔓の渦巻
シャーヒ・ズィンダ廟群2 2つのドームの廟
シャーヒ・ズィンダ廟群3 アミール・ザーデ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群4 トグル・テキン廟
シャーヒ・ズィンダ廟群5 シャディ・ムルク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群6 シリング・ベク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群7 八面体の廟
シャーヒ・ズィンダ廟群11 トマン・アガのモスク
シャーヒ・ズィンダ廟群12 第3のチョルタック
シャーヒ・ズィンダ廟群13 クサム・イブン・アバス廟
シャーヒ・ズィンダ廟群14 クトゥルグ・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群15 トマン・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群16 ホジャ・アフマド廟


※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「砂漠にもえたつ色彩展図録」 2003年 岡山市立オリエント美術館
「世界美術大全集東洋編17 イスラーム」 1999年 小学館