㉘ディオスクーリ神殿の東に㉞ウェスタ神殿(AEDES VESTAE)がある。
遠くから眺めると3本の柱の背後に壁のある神殿の一部だろうと思ったが、近くで見ると円柱は他にも残っている。
『ローマ古代散歩』は、火の女神ウェスタは、2代目の王ヌマの時に公的な礼拝の対象となった。丸い建物の奥室には、ローマの建国者ロムルスの祖先にあたる、トロイアの落人アイアネスがもたらしたという、ローマの世界支配を約すパラス女神像が安置されていた。出火し易く、現遺構は191年の火災以後のものであるという。
グーグルアースで見ると、円形の神殿に柱廊がめぐっている。小さな神殿だ。
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ウェスタ神殿の北側には㊱レギア(REGIA)なるものがある。
旧式な切石整層積工法(オプス・クワドィラートゥム)による三角の建物跡がある。ここからはREX(主)と刻まれたブッケロ陶器(黒くて固いエトルリア特有の陶器)のかけらが出土し、前述のヌマ王が建てたというレギアと認定された(遺構は前1世紀に創建当初のままに再建されたもの)というが、まったく気づかずに通り過ぎてしまった。
向こう正面の㊳アントニヌスとファウスティーナの神殿(T.di Antonino e Faustina)は、今では教会らしい。フォロ・ロマーノの入口はこの神殿の西壁に沿った階段の上にある。やっとここで入口よりも東まで移動した。
『ROMA』は、アントニヌス・ピウス帝の妻ファウスティーナの死と神格化の141年に建てられ、皇帝の死後は彼にも捧げられた。この建物は6本柱式、前柱式で、近代的な階段からのぼっていく高い基壇の上に立っている。シポリオン(雲母縞大理石)の円柱は、17mの高さで、縦溝の部分には牛に引かせて柱を倒そうとした時に、縄が差し入れられた。イタリア半島式の神殿の部屋はペペリーノ石の直角積みで造られており、アントニヌス帝の時期に典型的な冷たい古典様式の洗練された大理石のフリーズで装飾がされていた他、もともと大理石で上張りがされていた。8世紀にはこの神殿はサン・ロレンツォ・イン・ミランダ教会に姿を変えたという。
『ローマ古代散歩』は、保存状態が良いのは教会堂に転用されたからという。
その右横の花壇下からは、㊴建国以前の墓地が見出されているというが、この日はシートで覆われていて見えなかった。
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レギアを過ぎて北の聖なる道(Via Sacra)と合流する。
パラティーノの丘はティベリウス宮殿のを支えるアーチが何層かに積み重なっている。
『ローマ古代散歩』は、崖下の道はネロの時代につくられた新道(ウィア・ノーウァ)といい、沿道には商店や住居跡が、さらに先には崖上の宮殿を支えるためのアーチが続いているという。そのアーチの重なりを間近で見たい。
手前には㉟ウェスタ巫女の家(Casa delle Vestali)がある。共和政以後は大神祇官(宗教主、ポンティフェクス・マクシムス)の保護下に30年間、聖火保管の他、浄祓や収穫祭などの国家儀式全般に奉仕したという。
巫女は単数形ではなく複数形なので、正しくはウェスタ巫女たちの家だ。
立入禁止ではなかったので、近づくとウェスタ巫女の家は工事中だった。ここからパラティーノの崖下に近づけそうにない。
こんもりした木々を過ぎると、ウェスタ巫女の家の北側には㊲ドムス・プブリカ(DOMUS PUBLICA、大神祇官公邸)が存在した。40歳前に大神祇官になったカエサルも暗殺当日までここに住んでいたという。
フォロ・ロマーノにはカエサルに関するものが多いことに驚かされる。
ドムス・プブリカは中央にレンガ積みの遺構がある。壁かと思ったらドアがついていた。瓦はカエサルの時代のものだろうか。
その先では発掘あるいは修復中になっていた。何の遺構かわからない。ドムス・プブリカの続きだろうか。
パラティーノの丘のカサマツの下の建物は、ネロの地下通路から出てきて、ティベリウス宮殿の方に行こうとして立入禁止になっていた場所だ。
そして目の前の低い遺構は、ひょっとすると㊶酒神バッコスの聖所(Sacello di Bacco)かな。
南ばかり見ていた。北側には㊵通称ロムルスの神殿(c.d.Tempio di Romolo)があった。現在はここも教会となっている。
ファサードの凹んだ円筒形の神殿がある。マクセンティウス帝の息子ロムルスの神殿と言われてきたが、ユピテル・スタトル(踏み止まらせるユピテル)神殿が再建されたものではないかという説が浮上している。当初のものは、サビニ人との戦いで劣勢になったローマ人が退散するのを押し止めるようロムルス(初代王)が大神ユピテルに祈り、それが叶ったという場所に前3世紀初頭、建てられたとされているという。
凹んだ円筒形のファサードというのがよくわからない。グーグルアースで見ると、両脇の円柱と、中央の扉で弧の軌跡を描いているようにも見える。
来し方を振り返る。雨は降ったり止んだりを繰り返している。
先にはまたしても巨大な建造物が。
※参考文献
「ROMA ローマの昔の姿と今の姿を徹底的に比較する!」(2001年 Electa)
「ローマ古代散歩」(小森谷慶子・小森谷賢二 1998年 新潮社)