お知らせ

イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2018年11月19日月曜日

コンク 夜はサントフォワ聖堂のトリビューンへ


サントフォワ聖堂では、観光時期にはさまざまな催しがあり、村のホテルに宿泊できるわずかな観光客や、ルピュイから歩いて来た巡礼者たちを楽しませてくれる。
今夜は光と音楽で楽しむ階上廊巡り(Visite des tribunes en lumière et en musique)へ。このツアーの参加を決めた後に調べていて知った催しで、最初は9時15分からだったと思う。それがある日再確認しようと観光案内所のホームページを開いたら、9時半になっていた。それが何故か分からないでいたが、フランスに到着してわかった。夏至に近い頃だったので、日が暮れる時間に合わせてタンパンのライトアップをするために、この催しも遅らせていたのだった。

ホテルの外に出るとまだ日は暮れていなかった。
三日月の近くを飛行機が飛び去った。

教会前広場の手前で建物を
写していると、
タンパンの前に人だかり。
聖堂は傾斜地に建造されており、その前に建物があるため、真正面から全貌をとらえることはできない。西正面からのスケッチ(『中世美の様式下』より)は、19世紀に上部が改築される以前のもの。

西扉口ではジャン・ダニエル(Jean-Daniel)神父がタンパンについて説明していた。それが終わらないと扉は開かない。
これが最後の審判を表したロマネスク期のタンパン。詳しくは後日
いよいよ扉が開き、人が教会内になだれ込んでいく。私も負けじとすり抜けて突入。

この教会堂は村の割には立派だが、聖堂としては小さい。それにもかかわらず高さがある(『西欧の芸術ロマネスク上』より)。
階上廊見学は予約はしなくて良いが、パイプオルガン(フランス語ではオルグ orque とシンプル)の脇の階段から登るようアンヌさんに言われていた。
オルグは扉口の上部にあるため入っても見えない。ましてその階段がどこにあるのか・・・
しかし、探す必要はなかった。パイプオルガンは西扉口の上にある。扉口から入って左(北側)の狭い階段をどんどんと人が駆け上がっていくのが見えたので、私も登っていった。
ここで6€を支払う。この板壁の背後にパイプオルガンがあり、ジャン・ダニエル神父がすでに弾いていて、石造りの堂内にその荘厳な音色が響き渡っている。
順番を待っている間に柱頭や頂板を撮影。その写真は後日まとめて。
狭い円筒天井を階段を登っていく。
聖堂の階上廊柱間を、通路を通った順番に番号を付けました(『中世美の様式下ロマネスク・ゴシック美術編』より)

①北通路側
左の二連窓
中央の双円柱の柱頭は四面にそっぽを向く肉食獣
左付け柱の柱頭には天使とキリストが表されているらしい。
㉘と㉙の身廊側
6つの柱頭頂板にはそれぞれ浮彫がある。

81番目の窓?
ステンドグラスは全てピエール・スーラジュ(Pierre Soulages)が1995年に制作したもの。インターネットを始めた頃、早速サントフォワ聖堂を検索して、この新しいステンドグラスにショックを受けたが、今回旅して見学した教会には19世紀に修復されたものが多く、かえってこのようなシンプルなステンドグラスの方が良いと感じた。

北階上廊(トリビューン)の様子
各柱間と壁側の扶壁で形成された横断アーチと、その上側の壁面で1/2ヴォールト天井を支えている。

限られた時間内にできる限り撮影しようと、まずは自分のいる通路側の柱頭群を、次に対面にある柱頭群を写したつもりだが、中には撮り忘れたもの、ピントが合わなかったものなどもある。
柱頭については後日まとめることにして、今回は堂内が照明された階上廊を巡る雰囲気を。

②通路側
柱間の二連窓に3つ柱頭があるだけでなく、横断アーチの荷重を受ける、複合柱の付け柱にも柱頭がある。それだけではなく、この柱間右側面にもアーチを支える人物の浮彫が。
㉘南身廊側
人物が登場するものは特にしっかりと撮影したかったのに・・・

③通路側
植物文様が圧倒的に多い。植物文様も力強く素晴らしいのだが、
右の頂板には泳ぐ魚が
㉗南身廊側
南壁のひび割れにピントが合っている?

④通路側
中央の向かい合う草食獣は笑っていない?
右にはキリスト伝か聖人の殉教の場面
㉖南身廊側
身廊の柱頭にも人物や肉食獣、
左にはユリ?の間に人物、
中央はアカンサスの間から人頭、
右は巨大な鳥

⑤通路側
中央各角に顔を向ける有翼の天使
㉕南身廊側
右にフクロウのような鳥、
中央は剣で闘う戦士?

⑥交差部の手前通路側
それぞれ異なる植物文様。
中央の柱頭が高く見えるのは写し方が悪いから?
㉔南身廊側
窓が写っていると二連窓の位置が確認できる

⑦通路側
植物文様は似てはいるが、全て異なる。
二連窓の柱頭には石の肌のままだが、翼廊の柱頭は彩色されている。
⑫北翼廊側
植物文様は凝っているのにピンボケ
⑦の柱の間から南翼廊東側の二連窓⑱⑲⑳
同じところからクーポールを見上げる。明かり取りのためのもの。
円蓋とはいうが平面は八角形。イスタンブールのアギアソフィア(6世紀)のように、正方形からペンデンティブ(フランス語ではパンダンティフ、pendentef)で円形を構成するのではなく、四隅にスキンチ(同じくトロンプ、trompe)を設けて八角形にしている。天使の彫像のあるのがトロンプ部分。
この円蓋の導き方を知ったのは、ビザンティン美術でもイスラーム美術でもなく、ロマネスク美術を勉強し始めた頃で、その20年近く前にルピュイで購入した『L’ART ROMAN』という薄っぺらい本を開いた時だった。
サントフォワ聖堂では、東側の2つのトロンプに天使の彫像がある。

⑧通路側
こんな風に見ていると、交差部近辺は植物文様ばかりのよう。
⑪北翼廊側
植物文様ばかりとはいっても、二連窓の中に同じ意匠のものはない。

⑨通路側
と思ったら人物像もあった。吝嗇を表しているという(『Conques』より)
⑨北翼廊側
⑧⑨北翼廊側
横断アーチの荷重を受ける付け柱の柱頭

北翼廊通路より交差部と南翼廊

⑩北翼廊側
今まで見てきた柱頭の上の頂板には、横筋だけのものも含めて、何がしかの装飾文様があったが、ここのものはないらしい。
⑩通路側
壁面には⑨と⑩の間に付け柱がある。やはり植物文様の薄い柱頭がのっているが、何を支えているのだろう。

⑪通路側
北翼廊のヴォールト天井
⑧北翼廊側
窓がある

⑫通路側
二連窓の左に身廊の横断アーチが並んでいるのが少しだけ
⑦北翼廊側
身廊側の北階上廊のアーチ列が見えているが、ものすごいピンボケ

⑬通路側
⑰南内陣側
南翼廊の東側通路のアーチ列と窓が少し

⑭通路側
暗かったと思うと明るくなる。ずっと明るく照明していてくれた方がありがたいのだが。
⑯南内陣側
この2組の柱頭は配置が左右逆になっていると思うくらい似ている。頂板が違うくらいかな。

周歩廊の上へ
1/2トンネルヴォールトは半円になっている。コンクリートで修復されていた。
7つの柱間に3つの開口部があり、堂内が見下ろせるので、この辺りで写したものは全て⑮とする。
⑮交差部と身廊
中央より慌てて写すと、左右対称でもなくピントも合っていなかった。せっかくパイプオルガンが見えたのに。
こんな写真でも、クーポールを導くトロンプ(スキンチ)のうち、西側2つには天使の像がないことは確認できる。
⑮北内陣側
付け柱の柱頭はアカンサスの葉

⑬⑭北内陣側
二連窓の中央柱は双円柱
⑯⑰南内陣側
クーポール(円蓋)の南西トロンプには天使像はなく、人頭だけ。

⑯通路側
左の頂板は細い溝と太い溝の組み合わせだが、それが中央で断層のようにギャップをつくっていて、結構凝っている。
⑭の通路側の写真はなかった。



⑰通路側
中央の頂板にはくっつけたような花文が並ぶ
⑬北内陣側
中央の頂板はダミエ(DAMIER、市松文様、石畳文)

⑱通路側
植物文様とおおざっぱに表現してきたが、おそらくその起源はアカンサスの葉だろう。左柱頭にはそのアカンサスの葉が丁寧に浮彫されている
㉓南翼廊側
左と中央の頂板にはユリの花?
右の柱頭の葉には鳥が留まっている

⑲通路側
右の柱頭の角には人頭が見えるが、体は鳥のよう。迦陵頻伽のような人面鳥だろうか
㉒南翼廊側
中央と右の柱頭の浮彫が細かい。そして頂板がそれぞれ凝っている

⑳通路側
左柱頭の葉飾りは独特
⑳南翼廊側
横断アーチの柱頭もそれぞれに趣向を凝らしている

⑱⑲南翼廊東側

南翼廊より北翼廊
北翼廊2つの窓の間の付け柱の上は小さな円窓があるだけで、付け柱は何も支えていない
その下の高浮彫は受胎告知。詳しくは後日

㉑南翼廊側
中央や右の柱頭などを眺めていると、各隅の渦巻や葉脈の表されないアカンサスの葉が、隅で向かい合う草食獣や肉食獣という新たなモティーフを発想させたのではないかと思ったりする。
㉑通路側
右のアカンサスの葉を表現した柱頭の頂板には、前を向いて留まる鳥が小さく浮き出ている。

㉒通路側
左の柱頭のアカンサスは網目のような浮彫がある
⑲南翼廊側
左の柱頭には人物が表されているというのに、ピントがいまいち

㉓通路側
左の頂板の角にも何か表されているのだが・・・葉っぱかな?
⑱南翼廊側
周歩廊の窓が正面奥に見えている

㉔通路側
ここでも2箇所の頂板に小鳥が登場
⑥北身廊側

㉕通路側
左の頂板には手足を開いた人物が表されているような
中央の柱頭は天使で頂板は蔓草文様
右の柱頭には大きな鳥、フクロウ?が正面向きで、頂板には小鳥
⑤北身廊側
左柱頭は動き出すのではと魅入ってしまうアカンサスの葉、頂板は市松文様
中央は羽根を向かい合せた天使、頂板には小鳥

㉖南通路側
左柱頭には怪鳥、頂板には花と天使
中央の柱頭は装飾的なアカンサスの葉、柱頭は市松文様
右柱頭には楯と剣で闘う戦士
④北身廊側
左柱頭には人物が登場
中央は向かい合う草食獣、頂板には犬?

㉗南通路側
左柱頭は組紐文にアカンサスの葉が入り込む、頂板にはロゼッタ文と天使の胸像
中央には向かい合う怪鳥まはた怪獣、頂板にはパルメット唐草
③北身廊側
中央の頂板は紐を結んだような装飾
右柱頭はアカンサスに直線的な組紐が付けられている

㉘南通路側
通路側のアーチを支えるのは邪鬼ならぬアトラスのような力持ち
二連窓左柱頭にはエジプト逃避
中央の柱頭はアカンサスの葉、その上に出ているのが人頭に見えるのは私の目のせい?頂板には環つなぎ唐草でもなく組紐文でもなく
右柱頭のアカンサスの葉は力強い、頂板は4-5弁のロゼッタ文の入った環つなぎ唐草
②北身廊側
左柱頭は荒削りな葉文様だが頂板のパルメット唐草は丁寧に彫られている
中央の柱頭には優美に絡まる蔓
右柱頭のアカンサスの上には花の輪郭を蔓草で表したような頂板

㉙から見下ろすとジャン・ダニエル神父がパイプオルガンを弾いているのを写したがピンボケ。
柱頭はもちろん階上廊だけでなく身廊の付け柱にもある。
そして演奏が終了。神父の近くにいるのはどういう人たちだろう?

南階上廊を眺めて終了。
堂内は暗い上に、パイプオルガンの演奏と共に照明が明るくなったり、暗くなったりして、撮影は困難を極めました。
通路の隅の付け柱に変わった形の柱頭が。

㉙から眺めた①の二連窓はこのピンボケ写真だけ
人物が登場しているというのに、しかも明るいのに・・・

目立たない窓にはガラスではなくアラバスターが嵌め込まれ、そこからもまだ明かりが入ってくる。
狭い階段から身廊南側へ。

教会堂の外に出ると、近くの建物の向こうに月が。でもおぼろげにしか写らなかった。

さて、10時15分、タンパンに照明が当たり、
プロジェクションマッピングが始まった。ビデオで撮影したら腕がだるくなってしまった。写真撮影は翌日行った。

    フィジャックからコンクへ←      →コンク 朝散歩1

関連項目
スキンチとペンデンティブは発想が全く異なる
雲崗石窟の忍冬唐草文

参考サイト
Office de tourisme de Conques MarchillacLES NOCTURNES DE CONQUES

参考文献
「西欧の芸術 ロマネスク上」 アンリ・フォシヨン 1976年 鹿島出版会 SD114
「中世美の様式下 ロマネスク・ゴシック美術編」 オフィス・ド・リーブル編 1991年 連合出版
「図説ロマネスクの教会堂」 辻本敬子・ダーリング・益代 2003年 河出書房新社 ふくろうの本
「LA GRAMMAIRE DES STYLES L’ART ROMAN」 HENRY MARTIN 1946年 FLAMMARION
「Conques」 Emmanuelle Jeannin・Henri Gaud 2004年 Edition Gaud