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イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2024年7月16日火曜日

ミマールスィナンの建築巡り リュステムパシャジャーミイ Rüstem Paşa Camii


続いてリュステムパシャジャーミイへ Google Earth より 
スレイマニエジャーミイ・リュステムパシャジャーミイ・エジプシャンバザールの地図 
Google Earth より


スレイマニエジャーミイとミマールスィナンの墓廟の間のミマールスィナン通り Mimar Sinan Cd. が修復中で通れなかったので、外側のフェトゥヴァ小路 Fetva Ykş を通る。

下り坂が続いて、


最後は狭い階段になっていた。関係ないが左端の30トルコリラは150円程度。


降りたところがジェミル・ビルセル博士教授通り Ord. Prof. Dr. Cemil Birsel Cd で金角湾へ出る。

金角湾沿いの大通り Ragıp Gümüşpala Cd. の一本手前の Kutucular Cd. へ。

そこは商店街だった。


すぐにリュステムパシャジャーミイのミナレットが見えてくるので迷わなくてすんだ。



そして一角に地味な入口と暗い階段。他のモスクとは全く異なっているので、これがモスクと分からない見学者もいるだろう。
同書は、高さ6mほどの一階のすべてを倉庫と商店にし、その上にテラスと礼拝室を建設している。その理由としてクランは二つ挙げている。一つは周辺が商店などの建物の密集地なので、金角湾から良く見えるようにモスクの建物をより高くするため、もう一つは、一階を倉庫や商店とすることで、場所の有効利用を高めるため、としている。モスクの階下の多目的使用は以前にもあり、スレイマニエでも造成地である金角湾側のテラスの下を商店にしているという。


平面図 『トルコ・イスラム建築』より
①テラス ②柱廊 ③礼拝室正面入口 ④ ソン・ジェマアト・イェリ(遅れて来た人が礼拝するところ) ⑤主ドーム ⑥ミフラーブ ⑦ミンバル ⑧半ドーム ⑨マッフィル ⑩側廊 ⑪現在の入口 ⑫ソンジェマアトイェリのミフラーブ
リュステムパシャジャーミイ平面図 トルコ・イスラム建築より


階段は踊り場で曲がり、上り詰めると細長いテラスと柱廊が見えてくる。
『トルコ・イスラム建築』は、リュステム・パシャはスレイマン一世の娘婿で、スレイマン一世の治世の後半には延べ15年もの長期間大宰相をつとめ、権力と富を手にしていた。彼が各地に建てた数多くの建造物の中で、最も重要なものがこのモスクである。碑文がないので建設年は明確ではない。
多くのワクフや個人等から多数の商店や土地を買い取って、エミノニュの商業センターの一角にキュッリエの用地を確保して建設した。完成を見ずに1561年に死亡したので、妻のミフリマー・スルタンが1562年に完成させたとされているという。
リュステムパシャはここをもっと広い中庭にし、中央にシャドゥルヴァン(清めの泉亭)も造るつもりだったのでは。
しかし、それには一階を商店街にするにしても、左側には小路があるため、リュステムパシャが亡くなったために、妻のミフリマーは完成を急がせてこのような形になったのでは。


残念ながらキュッリエ(複合施設)にはならなかったが、礼拝室の外側でさえスレイマニエモスクにもない一面のタイル装飾。

二重の柱廊はスレイマン大帝の娘ミフリマーが1547-48年に建てたユシキュダルのミフリマースルタンジャーミイと同じだ。1561年にリュステムパシャが亡くなった後、このモスクは妻のミフリマーが完成させたが、この二重の柱廊はミフリマースルタンジャーミイのものよりも狭い。そういえば、ミフリマースルタンジャーミイではシャドゥルヴァン(清めの泉亭)のために屋根が突き出しているが、リュステムパシャジャーミイにはシャドゥルヴァンもない。下階のどこかにあるのだろうか。

ソンジェマアトイェリ(礼拝に遅れて来た人が礼拝するところ)

⑫ミフラーブは入口より南に一つ。



本来は礼拝室正面入口はここだが、ここから入らずに、

⑫ミフラーブは入口より北に一つ。礼拝室北端を回り込んで⑪の入口から入る。


狭い入口から中に入ると暗くて天井が低い。

⑩側廊
天井が低く上がマッフィルになってる。
同書は、側廊部分は、マフフィルの下になるので天井が低いこともあり、中央の空間とは別の空間の印象が強く、礼拝室空間の一体化は弱いという。

西壁には入口を挟んで二つの特別なマッフィルがあり、細い円柱とロータス形の柱頭で支えられていて、これがあるために、入ってすぐに狭いと感じてしまう。

その天井は、非常に凝った組紐文付き幾何学文の中に植物文様がちりばめられている。
上で礼拝するのが特別な人であることを示している。

入口の両側には主ドームを支える8本の支柱のうち2本がある。
上には特別なマッフィルが設えてあるが、スルタン用だろうか。

特別席は最高に荘厳されている。

タイルだけではない。オスマン様式の蔓草文様であるルーミーや中国の太湖石が元となったという雲文などが落ち着いた色彩で描かれている。


反対側の側廊にも低いマッフィルがある。南側廊は結界があるので、上階だけでなく女性用マッフィルになっている。あるいは現在は二階には人を通さず、一階で礼拝するようになっているのかも。



南側のマッフィルと

そのつづき


左側廊と上階のマッフィル
同書は、ドームを支える2本のピアとマフフィルを支える3本の円柱があるという。
三本目の小円柱は西側の特別なマッフィルを支える柱ともなっている。ピアは八角形で、柱頭以外タイルで覆われている。


そして中央のミフラーブ側
8本の支柱のうち2本はミフラーブ壁に埋め込まれる形で、ミフラーブの両側に1本ずつある。ミンバル(説教壇)

主ドーム
同書は、礼拝室は、直径約15m高さ約23mの主ドームが支配する正方形の空間と、その両側に二階を女性用のマフフィルとした側廊で構成され、全体は約24mX18mの横長のプランである。
中央ドームを載せている支柱のうち4本はキブラ壁と正面入口側の壁と一体になっていて、左右に2本ずつ断面が八角形のピアが配置されている。この8本の支柱の上に8個のアーチを架け、アーチの間にできる8個の浅いペンデンティブでドームに移行している。
支柱が8本の集中式モスクとして、ミマール・スィナンが建設した最初の建物であるという。
小さなペンデンティブだが、主ドーム全体を収められなかった。

それで、『トルコ・イスラム建築』より
リュステムパシャジャーミイ主ドームとペンデンティブ トルコ・イスラム建築より


ペンデンティブの一つ。やはりフレスコ画ではなく絵付けタイル

ミフラーブ周辺もほぼタイル。ミフラーブのムより下の面がタイルで覆われるのも、これまで見てきたオスマン朝のモスクではこれが最初ではないかな。
『トルコ・イスラム建築』は、特筆すべきは、絵付けタイル板による装飾である。半ドームの内側と側廊のヴォールト天井を除き、中央ドームの裾に至るまで、すべての壁とピアの面がタイル板で覆われている。イズニキ産のタイルが主で、キュタフヤ産のタイルも含まれているという。イズニキ産だけでは必要量のタイルがそろえられないので、リュステム・パシャはキュタフヤに私的な工房を作ったとクバンは述べている。
色彩もデザインも最高の作品を産出した時代のものである。タイル装飾の美しさでは、トプカプ宮殿以外では、このモスクが突出しているという。

タイル貼りのミフラーブは思っていたより凹みが深い。


ミフラーブのタイル
双耳壺から出た五弁花の束

リュステムパシャジャーミイのタイルについては後日忘れへんうちににて。

ミンバルは大理石

大理石を幾何学文様の透彫にしただけでなく、植物文様を浅浮彫にしてある。


壁面にタイルが多い分ステンドグラスは控えめ。

植物文様のような、チューリップの花を柱頭にしているような。



リュステムパシャジャーミイのドームはまだ見ていなかった。
礼拝室を出てみると、正面(北方向)を見ると、奥のブユクチュクルハン Büyük Çukur Han という古いハン(隊商宿、現在は商店街)ともう一つ小ドームがたくさんある建物が見えた。

リュステムパシャジャーミイ周辺の古い写真(説明パネルより)
モスクのきっちりした小ドームの他にも結構ええ加減なドーム風のものがいっぱい。


二階のテラスより公衆トイレになっている建物と金角湾沿いの通り


次にリュステムパシャジャーミイに行った時は良い天気で、金角湾側から近付いたのでドームとミナレット、そして二階にあるモスクがよく見えた。
どうでも良い話ですが、左下の赤いパネル BAY バイは「男性用」のマーク。女性用は BAYAN バヤン。おばちゃんたちがトイレを探す時は、婆やんはどこかな?などと言ってました。  


北側の入口も階段から。
リュステムパシャジャーミイは下階が商店街になっていて、商店の収入の一部がワクフとして徴収され、モスクの維持費や、イマレット(貧しい人用の給食所)・メドレセ・病院などの運営費などに充てられる。リュステムパシャジャーミイにはイマレット他の施設は造られずに終わってしまったけれど。
左側からおっちゃん(私より若い)が出てきているが、時間があれば、迷い込んで見たかった。


『望遠郷』には有り難いリュステムパシャジャーミイの断面図。中では気付かなかったが、ドームへの移行部が高い。
リュステムパシャジャーミイ断面図 望遠郷2イスタンブールより

広場から眺めるとドームとミナレットだけだが、

高い位置または遠方からならドーム下の半ドームや側廊の屋根の形までわかる。

リュステムパシャジャーミイ 建築巡礼17 イスタンブールより




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参考文献
トルコ・イスラム建築」 飯島英夫 2010年 富士房インターナショナル
「イスタンブール 旅する21世紀ブック望遠郷」 編集ガリマール社・同朋出版 1994年 同朋舎出版