お知らせ

イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2019年11月28日木曜日

ポンペイ 円形闘技場からアボンダンツァ通り


二度目のポンペイは①円形闘技場広場から入場。
ポンペイ遺跡地図1(『Plan of the excavation of Pompeii』より)
①円形闘技場広場  ②円形闘技場 ③パレストラ ジュリア・フェリーチェのプラエディア 「貝の中のウェヌス」のある家 ⑥ヴェトゥティウス・プラチドゥスのテルモポリウム ⑦パクィウス・プロクルスの家 ⑧ステファヌスのフロニカ

パエストゥムにも小さな円形闘技場が半分だけ復元されていたが、ポンペイのものはかなりの大きさ。
入口からすでに見えているが、その前に橋が。
小さな橋を渡って当時巡らされていた周壁の中へ。

②円形闘技場
完全復元2000年前の古代都市 ポンペイ』(以下『古代都市 ポンペイ』)は、中段席と上段席へは、外壁の周囲にあるいくつかの記念碑的な大階段を通って入場したという。
階段を登ってみたかったが、現在の入口は手前の大きめのアーチ門。
暗いカーブしたヴォールト天井を進むと、前方は閉じられている。
左に曲がると、左右の通路は出土品の展示室となっていた。
円形闘技場に出てきたら、ちょうど楕円の長軸にあたるところだった。
この円形闘技場とその周辺の様子はフレスコ画に描かれている(ナポリ国立考古博物館蔵)。円形闘技場だけでなく、隣の③パレストラ(複合的な体育施設)や通路でも格闘技やその練習をしている。
日の当たる観客席には船の帆を張って日除けにしている(ナポリ国立考古学博物館蔵のフレスコ画)。
かなり素朴な描き方

続いてアボンダンツァ通り(Via dell’Abbondanza)を西へ向かっていると、南側に修復中の屋敷跡。
内部は見られないので、写真パネルのジュリア・フェリーチェのプラエディア(Praedia di Giulia Felice)
PDFのポンペイ遺跡ガイド32ページは、ジュリア・フェリーチェの所有したこの大きな建築集合体は、紀元前1世紀の終わり頃、それまでにあった複数の建物を統合して造られました。改装の際には“都市の邸宅”として設計しなおされ、緑の空間を多く備えていました。
建物全体は4つの空間に仕切られ、それぞれが独立した入り口を持っていました。アトリウム形式の家で、大きな庭園があり、その周囲には居住空間やテルメ施設、広大な庭が配置されています。
ジュリア・フェリーチェの名は紀元62年の大地震の後で建物の正面に書き込まれた、家の所有者を明記する記録から明らかで、この書き込みは現在ナポリの国立考古学博物館で見ることができます。 建物内部の多くの空間の装飾は、その当時に手が入れられたもので、中でも夏のトリクリニオは、寝台の周りを洞窟風な設えが取り囲み、大理石の柱が並ぶ回廊に向かって開放されています。庭園にはエウリポが利用されて水と神聖な空間を形成し、一方見事な装飾のテルメ部分には、基本的な施設がすべて備わっていました。この家は遺跡の中でも最初に発掘されたものの一つです
という。

このパネルは水路のある庭園。

続いて「貝の中のウェヌス」のある家(Casa della Venere in Conchiglia)
ペリストリウム(列柱付き中庭)
浅い水槽の下に貯水槽があり、雨水を溜めるようになっている。
『古代都市 ポンペイ』は、名前は、庭の南の壁をかざる大きなフレスコ画にちなんでいるという。詳しくはこちら

またアボンダンツァ通りを西へ。
共同水道の蛇口の浮彫はすべて異なる。これは牛の頭
水槽
雲に乗ったキューピッド?

共同水道は各所に設置されているが、酒屋も多い。

ある酒屋のカウンターの壁面にはさまざまな色と模様のある大理石をはめ込んだオプス・セクティレ。
別の酒屋ではカウンターの上面にオプス・セクティレを施してあるものも。

あちこちの建物が修復中。

この共同水道の浮彫はよく分からない。両側の歩道と飛び石の横断歩道。車道?には馬車の轍がくっきり。


⑥ヴェトゥティウス・プラチドゥスのテルモポリウム(Casa e Thermopolium di Vertutius Placidus
この酒屋の壁には人物像の小さなフレスコ画が残る。
ララリウムと呼ばれる個人宅の神棚

フレスコ画のカウンターのある酒屋
何が描かれているのか分からないが

⑦パクィウス・プロクルスの家(Casa di Paquius Proculus)
『ポンペイ 今日と2000年前』は、小さなドムスですが、その割には大きな中庭でした。玄関ポーチにはたたき金にくくられた犬の絵が残っています。
アトリウムにも動物や人物の胸像を描いた大きなモザイクがじゅうたんのように広がり、水槽の回りにもアーチのついた円柱を描いたモザイクが残っていますという。

ローマ時代の選挙のポスター

⑧ステファヌスのフロニカ(Fullonica di Stephanus、洗濯屋)
同書は、この家は紡いだ糸の油抜きや汚れた衣類や布の洗濯をする作業場として使われ、もとはアトリウム形式だった家を改造してポンペイ最後の時期に改造されたものですという。
台所
洗濯場
第4様式のフレスコ画
広い壁面に鳥が小さく描かれる
獅子グリフィンも
アトリウムの中央には、本来インプルヴィオがあるべき位置に大きな貯水槽が置かれている。

ポンペイ 市民広場近辺

関連項目
ポンペイ 「貝の中のウェヌス」のある家

参考文献
「完全復元2000年前の古代都市 ポンペイ」 サルバトーレ・チロ・ナッポ 1999年 ニュートンプレス

2019年11月21日木曜日

パエストゥム(Paestum) 博物館


その後国立考古学博物館へ

最初の部屋中央の壁面には、パエストゥムの北方を流れるセレ川河口のヘラ・アルジーヴァ(Hera Argiva)遺跡にあった至聖所の宝物庫(Thesauros)を飾っていたメトープ(前6世紀前半)が展示されていた。
宝物庫の四つの壁面にあったように並べられている。
右は落馬した騎士
弓矢を構える兵士と馬を連れる兵士?
二人のケンタウロス

ヒュドリアと青銅製アンフォラ 前520年頃 ヘローン(英雄廟)の出土品
説明パネルは、6つのヒュドリアと2つのアンフォラはアルカイック期の青銅製品の優品である。その装飾は興味深いという。
青銅製アンフォラの一つ
説明パネルは、その内3つは、縦の把手の付け根には、下向きのパルメットの上に子羊に挟まれた女性の頭部が出ている。把手の上端では、2頭の寝そべったライオンが口縁部をつかんでいるという。
このような装飾に羊は珍しい。
黒絵式アンフォラ 前510年 アッティカ製
説明パネルは、高台は古い時代に鉛で呼び継ぎされているが、アテナイ人のキウジの画家の作品である。ヘローンの出土品のうち、特に重要な備品。絵はオリンポスに入るヘラクレスの神格化を表している。アテナ女神に導かれ、ヘルメスとアポロに随行される4頭の馬はアルテミスに歓迎されているという。
アテナ女神が連れているのは長い耳を立てた犬?
英雄廟の想像復元図
同博物館の図録『The Paestum National Archaeological Museum』によると、地下神殿

玉座のヘラ 前5世紀後半 大理石
説明パネルは、右手にパテラ盃、左手に石榴の実を持つヘラの像は、前5世紀末にポリュクレイトスがアルゴの聖域のために作成した女神のイメージに似ているという。
説明パネルは、前4世紀を通して、正方形の大きな建物が神殿や柱廊に増設された。ヘラ女神の小さな像は極上の材質である大理石で、その中から発見された。それは正方形の神殿の中に安置された崇敬の対象となる像で、ルカニア人によって管理された内陸地方と共通性があるという。
正方形平面で、一つの面にだけ入口が設けられ、そこには小さなポルティコがあった。屋根は日本でいう宝形造。

樋口の並んだ部屋
アッティカ式軒飾り 前580年頃 テラコッタ

説明パネルは、アテナ神殿の近くの堆積物より出土。
パエストゥムのギリシア植民都市を設営した第1世代が建造した祭祀用建物の屋根瓦。建物は前500年頃にドーリア式の大神殿の建造時に破壊されたらしいという。
角の部分

棟飾り(シマ) 前510年 アテナ神殿 砂岩
屋根の長辺の端に置かれた。パルメットと蓮の花がライオンの頭部と交互に並んでいる。その機能は雨水を流す樋口であるという。
正面より
イオニア式柱頭 アテナ神殿ケラ(ナオス)


女性胸部のアンテフィクス(軒瓦留め) 前6世紀後半 ヘラ神殿の祭壇近辺より出土
説明パネルは、赤い四角形の列と黒い卍の列の衣装が描かれる。地方作の彫像はエトルリア人の制作のよう。前6世紀にはまだエトルリアの文化が残っていたことを示すという。

ガラスの香油瓶の背後に置かれているのは、エトルリアの壁画。

がらんとした部屋にはルカニア人の墓地から出土した壁画が並んでいる。
これについては後日

アンフォラ 前340-330年 アフロディテの画家作 リチネッラ(Licinella)の13号墓出土
同館図録は、白と黄で上書きされた典型的なアプリア式で、当時南イタリア、そしてパエストゥムでもで広く流行した墓室の壁画であるという。
反対側

パエストゥム(Paestum) 遺跡← →ポンペイ 円形闘技場からアポンダンツァ通り

関連項目
パエストゥム国立考古学博物館 画室墓
参考文献
「The Paestum National Archaeological Museum」 Fausto Longo、Ottavio Voga 2010年 Edizioni Pandemos