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中央アジア各国の旅行記が完成したので、西アジアのイラン旅行をまとめています。
その中で気になるものについては、忘れへんうちにに記事を載せていきます。

2006年7月5日水曜日

松屋常盤  5月のきんとんは「岩根のつつじ」

京都、御所の南にある堺町御門から堺町通りを下がると右手に松屋常盤の店がある。この店を知ったのは『誰も書かなかった京都』(主婦と生活社 1973年)という本で、学生時代に古本屋で買ったものだ。「必ず予約のこと」と最後に記されていたので、予約さえすれば一見さんでも売ってくれるのかと思った。
一見さんお断りで有名な京都で、注文すれば買うことができるなら、美味しいきんとんというものを是非食べてみいと思った。電話をかけるとあっさりと予約することができた。
当日お店を訪ねた。現在は駐車スペースをとって奥に三階建ての建物になっているが、昔は道の際にお店があった。入ると、特にどうということなく買うことができた。注文しただけしか作らないというだけのことだった。この柔らかいきんとんを潰さないように持っているのが一苦労だった。実家に持ち帰ると、多少寄っているが、なんとか1つずつ独立して存在した。
家族で箱を囲んで開いた。それがどんな色だったか覚えていないが、皆ため息をついた。ぼんやりと淡いこの上なく上品なきんとんが目の前にあった。皿に取り分けるのも大変だった。見た目と違わず味も上品だった。

それ以来ごくたまに松屋常盤のきんとんを買う。月替わりなのだろうか、買う度にきんとんの色が違っていた。いつの頃にか建て直して今のお店になったが、入ると干菓子の型など、昔の店に飾ってあったものが、今でもあって懐かしい。
さて、久々に写真のきんとんを買った。ここのはぼんやりとしたきんとんなので、特に名前を聞くこともなかった。はっきりと表さないだけどうにでも解釈できる、それが京都の文化度の高さと評価していた。だが、後で電話で尋ねると「岩根のつつじです」。ちゃんと名前があったのだ。

まず、つぶさないように、少しも箱に残らないように、細心の注意を払って皿に移動させる。次ぎにきんとんに黒文字を入れる。柔らかいが芯がしっかりしている。そうだった。松屋常盤のきんとんは、芯に少し粒餡が入っているのだった。

味は実にあっさりしていて、それは美味しい。客に出しても「ほお」と、美味しさに儀礼でない反応がある。       菓子器 絵志野 窯印ム

次回は季節を変えて食べてみたいものである。ある程度気温が下がらないと安心して持ち帰れないので、秋も中程になった頃だろう。
そう言えば、11月に予約したら「もういっぱいです」と断られたことがあった。「お茶会が多おすんで」と。11月は炉開きの時期だということも忘れていた。今秋は早めに予約して、是非食べようと思っている。
このような文章ではこのきんとんの素晴らしさを伝えきれないので、上記の本より一部分を引用する。

ここのきんとんは、しんからのお茶のお菓子である。一粒よりの大納言のつぶ餡を芯に、いわゆるきんとんがかかっている。あずきの粒の大きさ、甘さ、これだけはどこもまねることができない。しっとりとぬれたようなお菓子のできぐわいが、くずれそうにやわらかなのに、難なくお箸でとれる調子のよさ。名工の腕のさえとしか言いようがない
と松屋の前を通って女学校に通っていたという平山千鶴さんの名文だ。日本語力の違いを痛感する。本当にその通りのきんとんである。