お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2013年10月16日水曜日

ペロポネソス半島5 オリンピア11 宝庫の軒飾り・棟飾り


オリンピアのスタディオンの西側山麓には、各都市国家の奉納品を収めた宝庫群が並んでいる(下図は同遺跡の説明板より)。
そして、それらはほぼどの国の宝庫かも推定されている。
『ギリシア美術紀行』は、A:宝庫群と丘の間のエイレイテュイア(お産の女神)の聖所、B:シキュオン人の宝庫、C:シュラクサ人の宝庫、D:エピダムノス人の宝庫、E:ビュザンティオン人の宝庫、F:シュバリス人の宝庫、G・H:いずれかがキュレネ人の宝庫、I:ガイアの祭壇、J:セリヌス人の宝庫、K:メタポンティオン人の宝庫、L:メガラ人の宝庫、M:ゲラ人の宝庫という。

L:メガラ人の宝庫 前520年頃
復元された破風が考古博物館第3室の奥壁に展示されている。宝庫の中でも間口が狭いのか、破風がそのまま室内に展示できた。
宝庫の想像復元図(考古博物館の説明板より) 
ドーリス式円柱が2本立つイン・アンテス式の宝庫で、上部構造にトリグリフと石彫の破風がある。エリア人工房制作による。
ローマ時代にコーニスに刻まれた銘でメガラ人と特定した。
破風の主題はギガントマキア(神々と巨人たちとの戦い)
5組の神と巨人の戦いのうち、中央の巨人の姿がほぼ残っている程度である。
海獣とウミヘビが両端に表されている。
これがその巨人。傷を負い、ゼウスの強打によって地面に倒れ込もうとしている。そのゼウスは足だけが残っているという。
右はヘラクレスというが、胴部だけが残っている。
続きは倒れかかった巨人と倒れた巨人の間にアレス。
左はアテナとポセイドンというが、アテナは全く残っていない。

そして、破風の屋根は彩色テラコッタだった。

左端
その先にライオンの樋口らしきもの。
右端の方が文様がよく残っている。
前6世紀のアンテミオンはこういう形だったようだ。
ライオンの樋口も。軒先のアクロテリオンも残っていた。

M:ゲラ人の宝庫 前6世紀後半
破風すべてがテラコッタ、それもマグナ・グラエキア制作でできていた。というよりも、ゲラがマグナ・グラエキアの植民都市の一つだった。
① 破風の枠  
①の上側と⑨は同じ文様
メアンダー文、菱繋文、ループ文
中央のものをループ文と呼ぶらしい。
組紐文に四弁花文または四葉、パルメット文などが組み合されている。
② 円形アクロテリオン 彩色によるアンテミオン ラコニア様式
④ アンテミオンのアクロテリオン 
⑤ 破風の軒飾り 彩色のアンテミオン 中央玄関 コリントス人工房制作
それ以外の宝庫からの出土品

⑧ 実特定の宝庫出土 破風の軒飾り 彩色によるアンテミオン装飾 前5世紀前半


③ J:セリヌンテ人の宝庫 軒飾りの一部と円形のアクロテリオン 彩色

⑦ D:エピダムノス人の宝庫 破風の軒飾り 彩色によるメアンダー文、葉文、渦巻文 マグナ・グラエキア制作

前6世紀後半はアルカイック時代に当たり、この時代のアンテミオンは、エピダウロス出土の軒飾り(クラシック時代~ヘレニズム時代)に表されたアンテミオンとはかなり異なっている。
そして、フランソワの壺のアンテミオンとよく似ている。

フランソワの壺 前570年頃 アッティカ黒像式渦形クラテル キウジ出土 高さ66㎝ フィレンツェ考古博物館蔵
アンテミオンは前6世紀前半には成立していた文様帯だった。

おまけ レオニダイオンの軒飾り 前4世紀中頃
隅に筒状に開いた花があしらわれている。
エピダウロスのアカンサス唐草とライオンの樋口のある軒飾りなどと比較すると、少しずつ違いがあって、アスクレピオス神殿のもの(前380-370年頃)よりは時代が下がり、プロピュライアのもの(前330年代)よりは以前に作られたらしいことがわかってくる。


オリンピア10 スタディオンの西に並ぶもの← 
                      →オリンピア12 オリンピアのトロスはフィリペイオン 

関連項目
エピダウロス3 考古博物館に神殿の上部構造
ギリシア神殿5 軒飾りと唐草文
ギリシア神殿3 テラコッタの軒飾り
オリンピア8 博物館4 青銅の楯
オリンピア7 博物館3 ゼウス神殿のメトープ
オリンピア6 博物館2 ゼウス神殿破風の彫刻
オリンピア5 ゼウス神殿
オリンピア4 博物館1 フェイディアスの仕事場からの出土物
オリンピア3 フェイディアスの仕事場
オリンピア2 オリンピック競技のための施設
オリンピア1 遺跡の最初はローマ浴場

※参考文献
「ギリシア美術紀行」 福部信敏 1987年 時事出版社
「オリンピアとオリンピック競技会」 ISTEMENE TRIANTI,PANOS VALAVANIS 2009年 EVANGELIA CHYTI
「世界美術大全集3 エーゲ海とギリシア・アルカイック」 1997年 小学館