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イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2014年4月24日木曜日

アテネ、アクロポリス3 エレクテイオン神殿


アクロポリスには、パルテノンの北側にはエレクテイオンがある。

『世界美術大全集4ギリシア・クラシックとヘレニズム』は、守護神アテナと海神ポセイドンおよび伝説のアテナイ王エレクテウスを合祀するエレクテイオンは、プロピュライアと同じ前437年頃、ペリクレスの時代にすでに計画されていたと思われるが、ペロポネソス戦争(前431-404年)によって建設が遅れた。前421年頃着工され、中断期間を挟み、前406年頃には完成されたが、火災で焼失。その後再建され、現在の建物は前395年に完成された。後6世紀にキリスト教教会堂に転用され、15世紀にはトルコ人により宮殿として利用されたため、内部はほとんど改変されてしまった。しかし、1986年に修復が完成し、現在に至っているという。
プロピュライアについてはこちら
エレクテイオンの前にある遺構は古アテナ神殿のもの。

エレクテイオン 前421-406年頃 大理石 神殿本体の床面22.46X11.63m
同書は、神殿は三つの部分から成り、6柱式の前柱廊をもつ本体と正面4本、側面2本の円柱をもつ北柱廊、そして6本の女人像柱(カリュアティド)をもつ南柱廊とにわかれている。各柱廊の意匠はすべてイオニア式を基本としているが、それぞれに異なった特徴を備えており、変化に富んだたたずまいをみせているという。
外観はプロピュライア同様に複雑だ。

西側には北柱廊の2本の円柱、エレクテイオン本体の4本の円柱、南柱廊の2体のカリアティドが並ぶ。
同書は、西正面には高い基壇上に腰壁付きの半円柱が6本立つが、これらの開口部はローマ時代の再建であるという。
南柱廊
同書は、南柱廊は通称「コレーの間」と呼ばれ、1.8mの腰壁の上に高さ2.03mの6体の女人像柱が立っている。これらの女人像は、ドレープ(襞)の美しいトゥーニック(女性用上着)をまとい、頭部でフリーズのない軽やかな水平梁を支えているという。
6体のカリアティドが印象的だが、本物は新アクロポリス美術館に展示されている。
カリアティド(人像柱)はすでにアルカイック時代につくられている。デルフィ、クニドス人の宝庫(前6世紀中葉)の人像柱が最も初期のもので、同じくデルフィのシフノス人の宝庫(前525年頃)にも人像柱がみられる。
南柱廊の軒飾りはデンティル(歯形装飾)くらいだが、神殿本体には2種類の卵鏃文の下に背の高いアンテミオンが浅浮彫されている。

南面と東面
同書は、神殿本体は3段の基壇上に載り、正面を東側に向けているが、東と南の壁は北と西の壁よりも約3m高い地面上に立っているという。
同書は、東正面の6本の円柱は、直径が0.69m、高さが6.59mあり、北隅の1本(大英博物館)を除く5本がオリジナルである。前柱廊の後壁には扉口と二つの窓があったが、ビザンティン時代に教会堂の内陣後壁(アプス)を造るために取り壊されたという。
そう言われると、右端の円柱だけ色が違う。
イオニア式柱頭
円柱上端には卵鏃文に続いてアンテミオンの浅浮彫が見られる。そういえば、デルフィのハロースあたりの参道脇に置かれていたイオニア式円柱にもアンテミオンの浮彫があった。
神殿内には修復のための道具が持ち込まれている。
同書は、内部は後世の改変のため原形をとどめていないが、かつては隔壁によっ東神室と二つの中室および西神室に区切られ、それぞれに別々の神々が祀られていたという。
パルテノンの列柱とくらべると、細く長い円柱が際立つ。

東正面と北柱廊
北柱廊は3mほど低いところに造られ、カリアティドの支える南柱廊よりもかなり大きいものだった。
北柱廊への階段を下りていて、古い部材を土台にしてこの階段が造られているのを発見。

北柱廊。
同書は、側前室に相当し、直径0.82m、高さ7.63mの6本のイオニア式円柱で囲まれている。円柱の柱礎には入念な彫刻が施されており、格間天井や神室への扉口とともにイオニア式建築装飾の優美さをあますところなく伝えている。フリーズ(水平装飾帯)には青灰色のエレウシス産石灰岩が用いられており、大理石の浮彫りを留めていた釘の跡が残っているという。
柱礎の彫刻は気づかなかった。
何と言っても気になるのはこの天井の格間。プロピュライアの格間天井よりも刳りが深いような。
5段くらいありそうな刳り形。これは重量軽減のためと思ってよいのだろうか。
ローマのパンテオンのドーム天井にも浅い刳りの格間が整然と並んでいたし、エピダウロスのトロス(前330年以前)の周柱廊には、中心に花の高浮彫のある大きな格間に、3段の刳り形があった。
それよりもずっと以前にこのような刳り形があったとは。

神室への扉口上側と、少し離れた上部には浮彫の文様帯がある。
扉口上の浮彫
非常に装飾的なアンテミオンで、ハチがその間を飛んでいる。
卵鏃文の下には複弁の蓮華のようなロゼット文が等間隔に7つ並んでいる。

      アテネ、アクロポリス2 パルテノン神殿
                    →アテネ、アクロポリス4 周囲を眺める


関連項目
アカンサス唐草の最古はエレクテイオン
ギリシア神殿11 格間天井に刳り形

デルフィ3 アポロンの神域2 シフノス人の宝庫
デルフィ4 アポロンの神域3 アテネ人の宝庫
パンテオン(Pantheon)でドームを見上げる
アテネ、アクロポリス1 プロピュライア
アテネ、アクロポリス2 パルテノン神殿
アテネ、アクロポリス5 南麓のディオニシオス劇場
アテネ、アクロポリス6 ヘロデス・アッティコスの音楽堂
アテネ、アクロポリス7 新アクロポリス美術館1
アテネ、アクロポリス8 新アクロポリス美術館2
アテネ、アクロポリス9 新アクロポリス美術館で夕食

※参考文献
「世界美術大全集4 ギリシア・クラシックとヘレニズム」 1995年 小学館
「THE ACROPOLIS THROUGH ITS MUSEUM」 PANOS VALAVANIS 2013 KAPON EDITIONS