お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2015年6月17日水曜日

シャーヒ・ズィンダ廟群2 2つのドームの廟



シャーヒ・ズィンダ廟群の表玄関を入って5:夏用のモスクを過ぎると、左手に大きな建物が現れる。

9 2つのドームの廟 15世紀初め

正面(テラス)からは高い方のドームだけが見えて、その下が入口になっている。階段の途中にあるので入りにくい。

『中央アジアの傑作サマルカンド』は、ウルグベク時代に、西階段の方角の2番目のチョルタックの下に、2つのドームの廟が建築された。伝説によると、この廟はアムール・チムールの乳母ウルジャ・イナガと彼女の娘ビビ・シネブのために建築されたという。
20世紀の中頃には、この廟は天文家のカジ・ザデ・ルミの廟の上に建てられたという仮説もあった。しかし、考古学の発掘データによれば、若い女性の遺骨が発掘されたそうである。これは伝説の通りである。この若い女性は、グルハナの下の土の棺に眠っている。
この廟の表玄関と角の僧房は、完全に崩壊した。装飾には幾何学、碑文のモチーフに上薬をかけた煉瓦が多く見られる。ある部分は、上薬をかけたモザイクのタイルで装飾されているという。
かなり修復されていて、新しそう。

中に入ると、白いドームから十六角形、八角形となって、四隅のスキンチに複雑なムカルナスがあって、正方形の壁面へと繋がっている。
四隅の一つ
ムカルナスはドームを仮構するために必要な四隅の工夫で、構造体だったが、ここでは正方形から八角形へと移行するためのスキンチほ3面のムカルナスのある曲面で分割しているだけのように、建築的な知識のない者には見える。
その上の四角い凹みは、窓という明かり取りを大きく取るための工夫だろう。
その下の腰壁には、焼成レンガと色タイルによる3色のモザイクで、亀甲繋文を構成している。

二つ目のドーム
腰壁の青が鮮やか。ここでは六角形のタイルを貼り付けている。これも亀甲繋文だが、修復のよう。
ここには背の低い石棺というよりも、蓋だけ置かれたような石棺があった。ここの下から若い女性の骨が発見されたのだろう。
床には不揃いの石が敷かれ、粗末な印象を受けたが、上を見上げて驚いた。そのドームの装飾的なことに。
14世紀後半につくられたアランブラ宮殿の二姉妹の間のムカルナスほどではないにしても、かなり細密なムカルナスとなっている。しかも、それぞれの弾けた粟のような曲面に、白地に青を基調とした文様が施されている。フレスコ画だった。
このような複雑なムカルナスはどのように構成されているのだろう。それぞれの部品の形が異なっていて、その種類だけでも相当な数だろう。しかし、意外とムカルナスは単純な形を組み合わせてできていると、深見奈緒子氏は『イスラーム建築の見かた』書いていた。
それについてはこちら
四隅
平面に区画された長方形から尖頭アーチ状のものが、少しだけ立体性を帯び、そこからこの複雑なムカルナスは始まっているが、その四隅は小さなドームのある凹みになっている。

ドームだけではない、ドーム下の正方形の立ち上がりの下部には、四面にムカルナスの壁面が展開しているのだった。
部屋が小さいのに、ムカルナスが大きいので、撮影には苦労する。
その上部
真下から写すと、
そしてその下にはこのように美しいフレスコ画が鏤められている。
『中央アジアの傑作サマルカンド』は、建物の内装には、白の地にブルー模様であしらった絵の跡が残っている。20世紀後半から21世紀初めに、2つのドームの廟は何度も修復された。修復時には、内面のドームの絵も修復されたという。
剥離のない壁面は修復されたものかも。

階段を登りきって振り返ると、2つのドームがよく見える。
ドーム下の長い円筒部分は内側のドームの天井とは別に造られた外側のドームをできるだけ高く見せるための仕掛け。二重殻ドームというのだが、それについては後日
この写真では、建物の下側が入っていなかった。ドームばかりに気を取られて、建物全体を写していなかった。

      シャーヒ・ズィンダ廟群1 表玄関にオリジナルの一重蔓の渦巻
                       →シャーヒ・ズィンダ廟群3 アミール・ザーデ廟

関連項目
イーワーンの上では2本の蔓が渦巻く
ドームを際立たせるための二重殻ドーム
装飾的なムカルナス
直交座標系と極座標系のムカルナス
ムカルナスとは
ムカルナスの起源
シャーヒ・ズィンダ廟群4 トグル・テキン廟
シャーヒ・ズィンダ廟群5 シャディ・ムルク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群6 シリング・ベク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群7 八面体の廟
シャーヒ・ズィンダ廟群8 ウスト・アリ・ネセフィ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群9 無名の廟2
シャーヒ・ズィンダ廟群10 アミール・ブルンドゥク廟
シャーヒ・ズィンダ廟群11 トマン・アガのモスク
シャーヒ・ズィンダ廟群12 第3のチョルタック
シャーヒ・ズィンダ廟群13 クサム・イブン・アバス廟
シャーヒ・ズィンダ廟群14 クトゥルグ・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群15 トマン・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群16 ホジャ・アフマド廟


※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「イスラーム建築の見かた 聖なる意匠の歴史」深見奈緒子 2003年 東京堂出版