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イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2017年4月10日月曜日

イスファハーンで朝散歩2


前日はホテルからアマデガフ通りを東に進路を取ったので、今朝は西に向かって、通りの北側の歩道を歩いていった。
Google Earthより

バーゲ・ゴルダ通りとの交差点。この通りを南下すれば、ザーヤンデ川に至る。
そして交差点の向こうには、こんな傾斜のある建物が。この建物、イスファハーンに到着した時に見かけた記憶が。
大きなホテルの向かい側にはショッピングセンター
大きなホテルの次にはドームのある建物が。マダリ・シャーという神学校で、18世紀に建てられたものらしい。
角を右折してチャハル・バーゲ・アバシ通りに入っても、神学校のフジュラ(寄宿舎)が延々続いている。
門にイーワーンはあるが、そのムカルナスはサファヴィー朝最盛期のものとは比べるべくもない。
イーワーントルコブルーの3本のケーブル・モールディングで縁取られ、その下部が花瓶と花茎(vase and shaft)モティーフとなっているところは、イマーム広場南側のマスジェデ・イマームの表門に似ている。
フジュラはまだまだ続く。
この神学校の修復の様子を紹介する写真がガラス越しに展示されていたりした。
神学校に続いてバザールがあったが、まだ開いていなかった。左下の黄色い箱は郵便ポスト。

北上を続けていると現れたのは、またもや長い建物。新しいけど。
ちょっと拝見。
天井はガラス張りで、中央は吹き抜け。
集合住宅でもないみたい。
地面より下の階に池や噴水がある。

もう一つ同じような建物があり、その間を通っていく人あり。
私も入っていくと、高い松の木に包まれた静かな庭園が。そして前方に建物が見え隠れしている。
振り向くと、通りに面した建物は商業施設のようで、長々と続いていた。その建物に近づいて行くことにした。
歴史のありそうな建築物だが・・・
左上イーワーン
天井も複雑だが、アリー・カプー宮殿のような緻密さはない。
草花文の絵付けタイル。
その下の壁面
様々な色の象と、象に襲い掛かる怪鳥の絵付けタイル。

西正面は、細長い2本の柱のある柱廊(アイワン)の両側に各階2室ずつある。
アイワンの天井はチェヘル・ソトゥーン宮殿と同じ寄木細工かな?
それに2階奥の中央部にはムカルナスが見える。
二階の部屋の壁面はアリー・カプー宮殿のような陶磁器の形の壁龕があるけど、平らな壁面。

南面も2本柱のアイワンで平天井には鏡が並んでいる。
中央には貝のような形のムカルナスを、徐々に小さくしながら水平に積み上げている。
『イスラーム建築の世界史』は、ハシュト・ベヘシュト(八天宮、17世紀)のムカルナスドーム。美しい彩色で飾られ、ところどころ鏡細工が挿入されるという。
これもまたサファヴィー朝ムカルナスの超絶技巧に入るものかも。

南面は各階両側に1室ずつ設けられ、
二階の部屋は極彩色のドームとムカルナスの天井となっている。

石段のある東面と北面の角には小さなイーワーン形のバルコニー。
二階バルコニーの小イーワーン。
上のタイルにはサルが2頭ずつ描かれている(絵付けタイル)。
一階バルコニーにもイーワーン。
タイルには草花の中にカモ類を仕留めた猛禽類が描かれている。

この宮殿も東面が玄関のようで、横向きの小さな階段が付いている。
天井の寄木細工は幾何学文。
奥のムカルナスには草花文が描かれている。
右下の壁面
青い鹿を仕留めたライオン。風に靡く草や小鳥も描かれる。
左下壁面
白い鹿を仕留めた虎
その左の壁面
タイルには一風変わった草花文とクジャク。
タイルは全体に建物ほど古いものには見えなかった。修復、あるいは改装の時に一新されたようだ。

これくらいの距離でやっと全体が見えた。
右前に説明板があり、ハシュト・ベヘシュト(Hasht Behesht)宮殿であることがわかった。
サファヴィー朝期に小夜啼鳥(ナイチンゲール)庭園の中心に建設された建物群の中心をなす。1669年、ソレイマン王時代の初期に建立された。この宮殿には、一つは、部屋、柱、そして中央の池のムカルナスの装飾、他方ではその美しく二つとない装飾技巧が天国のようなイメージを与える。この建物は二階建てで20の部屋が左右対称に配置され、サファヴィー朝の王や王族の休憩地として使われ、この宮殿のたぐいまれな美しさは、露天と装飾に使われた鏡の効果で成立する中央ホールの構造だけでなく、真珠・4つの泉・大理石という名の3つの池、そして壁面装飾、柱、寄木細工の天井や貼り付けた鏡という各4面にあるアイワンによるものである。
もう一つの特筆すべきところは、二階の北西翼にある金色の部屋である。宮殿の外観は、素晴らしいタイル張りがあり、それは古い想像的で伝説的な物語に関するものである。
このような総てのことから、「ハシュト・ダル・ベヘシュト宮殿」とも呼ばれているという。
宮殿玄関の前には長い池があるのは、チェヘル・ソトゥーンと同じ。
この宮殿は平面が正方形、二階建てで部屋がたくさんある。それで思い出したのが、ウズベキスタン、テルメズのキリク・クズ遺跡(9-14世紀)。キリク・クズも平面正方形、二階建てで40室あったという。違いは要塞のように四方に監視塔があり、壁に囲まれていること。キリク・クズの中央部からも空が見えただろうか。
チェヘル・ソトゥーン宮殿のように、池の手前から宮殿正面を眺めようと思ったが、噴水が邪魔。

そのまま小夜啼鳥庭園を東に抜けると、バーゲ・ゴルダ通りに出て、向こうに格子状に透けた建物があった。これもまた、イスファハーンに到着した時に見て印象に残った建物。そしてその正体は図書館だった。
図書館の南向かいには建設中の建物?それともこういう建造物?
道路掃除をしていたおじさんを撮させてもらう。
そのままバーゲ・ゴルダ通りを南に歩いていると、写真を撮ってと声を掛けられた。

   チェヘル・ソトゥーン宮殿←   →マスジェデ・ジャーメ1 南翼

関連項目
キリク・クズ遺跡


※参考文献
「イスラーム建築の世界史」 深見奈緒子 2013年 岩波セミナーブックスS11