このあたりは赤茶色の土地に緑青色の縞があり、その上を流れる水の筋が無数にあるというものすごいものだった。その中を高速道路が通っているのだが、車の中からみた景色はただのゴビ灘で、そんな色彩ではなかった。広々とした中央分離帯がやがてすぼまる手前で右に折れ、吐魯蕃駅へと北北東に進路を取っていた。直線距離で32㎞ほどある。
ウルムチから来た列車に乗り込む。我々は二階建て寝台車の下の方だった。窓は右側にある。

グーグルアースで見ると、そんなに時間がたたないうちにトルファン・ウルムチ間の高速道路を越えるかくぐるかしたはずだが、記憶も写真もない。

老風口とは、天山から吹き下ろす風が、山の間を通り抜け、砂漠に吹き出す、風の通り道である。シルクロード沿いには、各地に老風口と名付けられた地点がある。南疆定着道のこの老風口では、天山の雪解け水を集めて流れる白楊河の川沿いに、天山颪の強風が通り抜けていくのだ。一年中絶えることなく、強風が吹き付けているとある。
ゴビ灘の砂を天山側に盛り上げて、防風壁が作られているのだそうだ。そういうところを横断していたのだ。




駅を過ぎると、列車はS字状カーブを描きながらどんどんと高度を上げだした。いよいよ天山山脈へ入るのだ。

このゴビ灘の東の向こうにトクスンオアシス、その向こうにトルファンオアシスが広がっている。

※参考文献
「シルクロード絲綢之路 第5卷天山南路の旅」(1981年 NHK出版)