後陣の半ドームを飾るのは聖母子像。
ドームの奥の半ドームの更に奥の小半ドームに聖母子像は浮かんでいる。
しかし、これはユスティニアヌス帝が創建した当時のものではない。イコノクラスム(聖像破壊運動)で人物像などはすべて失われたので、イコノクラスムが終結した843年以降のものである。
後陣の半ドームの手前には幅広の横断アーチがあるので、聖母子像はどこまでも遠く高い。
横断アーチの右(南)側には大天使ガブリエルが羽を広げている。左側にあった大天使ミカエルの像は失われている。
この横断アーチと後陣の半ドームは金地モザイクで光り輝いているのだが、どういうわけかこのカメラでは煤けたようにしか色が出ない。
それでもズームしていくと金色が輝いてきた。
曲面に描かれているため、ズームすると全体にピントを合わせるのが難しい。
『天使が描いた』は、聖母は濃紺のキトン(トゥニカ。袖のない膝までの下着)の上に濃紺のマフォリオン(頭と肩を覆うヴェール)というシンプルな服装で、膝に幼子キリストを抱く。幼子キリストは聖母の真ん中に位置し両者ともに正面を向いている。プラテュテラ型とよばれる聖母子像であるという。
カメラを替えると実際の金地モザイクっぽく写った。ピンボケ気味だけど。
キリストの光背には銀箔テッセラで十字が表されているのはよく見えるのだが、その衣服もまた銀箔テッセラで衣褶線などが画かれているのは、何となくわかる程度だった。
聖母子は二人とも正面向きだが、同じ方向にあるものを見つめている。
カメラが違うとここまで色が違うものか。ちょっと赤っぽいようにも思うが、金地モザイクの光り輝く雰囲気はこちらの方が出ている。
『天使が描いた』は、聖母子と左右の横断アーチに描かれた大天使、背後の金地、アプシスの手前に記された銘文などすべて連続しており裂け目のないこと、つまり修復された痕跡はなく、すべてが同時に制作され、しかも当初の状態のままであることがわかったという。
この小半ドームの裾に並んだ窓は格子になっていて、ロンデルではない。アヤソフィアにはロンデル窓はなさそうだ。
同書は、大天使は虹色に輝く流れるような翼を持つという。
右手には杖、左手には球を持っている。翼だけでなく、衣褶の表現も丁寧だ。
ガブリエルの両側の文様帯も素晴らしい。これまで見てきたアヤソフィア内の文様帯のモティーフとは異なっている。
ガブリエルは聖母子像よりも低い位置に、平たい面に表されているので、ピントは合い易かった。
後陣の上を見上げる。上から、大ドーム・大半ドーム・横断アーチ・後陣の小半ドーム。
※参考文献
「NHK日曜美術館名画への旅3 天使が描いた 中世Ⅱ」(1993年 講談社)