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イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2016年11月21日月曜日

タジキスタン民族考古博物館4 ペンジケントの壁画


壁画 アーチ型門前の場面 5-8世紀 134.0X81.0X70㎝ 
『偉大なるシルクロードの遺産展図録』は、獰猛な雄牛に追われ、建物の扉窓から勢いよく駆け出そうとしている若い男性を中央に、右側には、甲冑を着て顎髭をたくわえた兵士が騎乗したまま手に旗を持って進んできている。左側には同じく上半身に甲冑をつけ、カフタンを着た兵士が2人立っており、緊迫した場面が描かれているという。
ペンジケントの兵士は横縞のスカートのようなものを着ている。それが上着とひと続きの吹くなのか、上下別々なのかはわからない。
兵士のカフタンの間から、内着の大きな連珠円文がのぞいている。

壁画 ハープ奏者と戦闘の場面 8世紀前半 142.5X58.0/141.0X91.5/142.0X94.5㎝ 建物址Ⅴ部屋Ⅰ出土
同書は、広間の出入り口の正面に配されていたこの壁画の左上方にはアーチがあり、その下には獅子の背に座ったナナー神の像が描かれていた。ナナー神の左右には小さな像を描かれていたが、この画面左側ハープ奏者がその一つである。ハープ奏者の薄い衣やインド風の衣装、ハープなどはすべてペンジケントの美術では想像上の存在として描かれている。それとは対照的に、女性の後方の甲冑を着た4人の兵士が描かれ、そのうち2人は決闘している。2人のうち、一方は槍を手にし、他方は弓を引いている。3番目の兵士は、先端がとても大きな棍棒を肩に担ぎ、4人目は手に旗を持っているという。
横縞のスカートがペンジケントの兵士なら、敵兵は全身横縞の服を着ている。よく似た軍服を着るものだ。
『世界美術大全集東洋編15中央アジア』は、ハープ奏者の左側に、獅子の尻尾と大腿の一部が見えている。ハープ奏者の頭上には、ソグドの柱によくあるタイプの柱頭が描かれている。ナナー女神像の左右には小さな像を描いた物語絵が拝されていたが、その一つがこのハープ奏者である。頭光、風になびくリボン、インドの彫像に典型的ないわゆる「三曲法(トリバンガ)の身体表現で表されているが、ソグド美人の理想像に即して、細腰、大きく丸い乳房がとくに強調されている。切れ長の目と細面の顔もまた、7世紀末から8世紀前半のソグド美術に典型的なものである。明るい色で描かれた奏者像は、黒灰色がかった青色をふんだんに使った地に描かれているという。
ナナー女神の侍者というのでもなさそうだ。
短い肩掛けか、肩だけ色の違う布にして作られた半袖の上着はVネック。その袖端か、臂釧かわかりにくいが、連珠状の装飾がある。手首には2つずつ腕釧をはめている。左手にをくぐる、たゆたう長いリボンは、飛天の天衣のよう。
どうやら右足は左足の上にのせているらしい。

壁画 天蓋下の宴の場面 5-8世紀 125.0X74.5/120.5X69.0/121.0X69.0/120.5X112.0㎝
同書は、フリーズ状に残存したこの壁画には、有翼の王冠を被った王の肖像が連続して描写されている。画面左の前方には色とりどりの食物が並べられており、食卓には同席する複数の人物がいたと思われるが、食物に伸びる一人の手しか残っていなかった。さらにその先には、天蓋の下で多くの人物が登場する饗宴の場面が描かれている。この場面では、幅の広い玉座に座った、黄金の羽のついた王冠を被る王が主要人物である。王の右側には、王と同じく手に碗を持ち、絨毯に座る若い人物が描写されている。
王の左前方には、杯に順にワインを注ぐ人物、鎖かたびらとカフタンを着た兵士が膝を立てて立っている。王の左側には、王の頭部と同じ高さに、豪華にリボンをつけ、リングを銜えた鳥の絵が描かれている。この場面では、空の皿を手に持つ王が描写されており、食事を終えた王が次に移動することを暗示しているという。
数本の棒で支える天蓋は、風を受けて軽やかにたゆたっい、その下では、絨毯に胡坐した人物たちが楽しんでいる。
絨毯は、四弁花文の入った菱文繋ぎの文様で、その縁を連珠円文の布で縁取りされている。
左側の王の右手上にも長いリボンを着けられた鳥が大きな目を開いている。
不鮮明ながら、王の赤い長衣にも水玉のような文様があるようで、細いズボンも文様がある。
右側の王と兵士の間の鳥はあいにく目が大きいかどうかわからない。
兵士のカフタンの縁も連珠円文が見えている。

戦闘の場面 7-8世紀 宮殿第11室南壁
「日本・タジキスタン共同事業による保存修復」と日本語で説明書きがあった。
赤いカフタンと連珠円文の内着の兵士が、倒れた人物の上を馬で疾駆する場面。
大切なものを守るかのようにして倒れている。

騎馬兵と歩兵の戦闘場面
右の横縞のスカートを着けたペンジケントの兵士は、縞のない服を着た騎馬兵と闘っている。馬の足元に倒れている兵士は、衣装から敵兵だと思われる。

他には壁画断片。
小さな断片が繋がった時の嬉しさは、土器の復元やジグソーパズルでも同じだが、全体として何を描いているのかはわからない。

水玉は衣服とか、
革帯らしきものが複数交差するのは馬の体だとか、その下の黒いものは踏みつけられた敵だとか想像してみる。
下端には渦巻く水が。ペンジケント遺跡の北側を流れるゼラフシャン川だろうか。
人物やライオンの顔も。

ロルムスとレムス カライ・カフカハ(ブンジカット)遺跡出土
遺跡から少し離れた場所にローマ建国神話の像があったが、ブンジカット遺跡から出土した壁画に描かれていたためということだった。
何故遺跡見学の時にはブンジカットという名称なのに、壁画になるとカライ・カフカハ遺跡とされるのかは不明。

馬の脚部 7-8世紀 カライ・カフカハ1遺跡、宮殿第4室東壁 日本・タジキスタン共同事業による保存修復
阿修羅のように三面の神は馬上で弓を引いている。
甲冑は胸板や銅部が非常に装飾的に描かれている。
修復されたのは馬の脚部だけということだろうか。


    タジキスタン民族考古博物館3 ソグド時代の彫刻など
                        →タジキスタン民族考古博物館5 仏教美術

関連項目
エルミタージュ美術館1 ペンジケント出土の壁画
タジキスタン民族考古博物館6 イスラーム時代
タジキスタン民族考古博物館2 タフティ・サンギン出土品
タジキスタン国立古代博物館1 サラズムの王女

※参考文献
「世界美術大全集東洋編15 中央アジア」 1999年 小学館
「偉大なるシルクロードの遺産展図録」2005年 株式会社キュレイターズ