お知らせ
イスタンブールでミマールスィナンの造ったモスクを見ていて、その前はどんな形のモスクだったかが気になって、オスマン帝国の古都を旅してきました。最後にはまたイスタンブールを訪ねます。
詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。
2018年2月22日木曜日
イランガラス陶器博物館 2階
二階の各部屋はそれぞれが斬新なデザインの展示スペースとなっている。
ザリン・ホール
大きな方形のケースは四面が太い黒の格子になっていて、正面から見ると、そこに小さなガラス容器が収められているのが見えるが、斜めからは枠しか見えないのだった。
こんな小さなものを作れたものだ。
3X5の黒い円柱にそれぞれ1点ずつガラス容器が入れられ、360度方向から器を見ることができる。しかしながら、照明が器の下からなので、上部は暗く、下部はまぶしいという状態で、見にくいし、写しにくいのだった。
ロータス文鉢 アケメネス朝時代(前550-330年) 鋳造 ペルセポリス出土
浅いロータス文が胴部下半を巡る。金属器を真似たもののように見える。
モザイクガラス瓶 パルティア時代(前247-後228年) 出土地不明
説明のタイトルに「モザイクガラス」とある。ガラス玉を集合させて器に仕上げたので、このような名称になったのだろう。奥に把手もある。
吹きガラスという技術があれば、そんな面倒な工程は必要なかったのでは。それとも遊び心?
目移りがしてどれを写せば良いか迷ってしまう。
水差し 型吹き イスラーム初期 出土地不明
ナツメヤシのような大きな葉が浅く線刻されている。暗いため、銀化した箇所が紫に見える。
その後ピンボケ写真が続き、ちょっとましなものを、
ガラス瓶 後3-4世紀 型吹き ニシャープールまたはゴルガーン(いずれもイラン北東部)出土
円形切子碗 3-7世紀 ギーラーン出土
カットが進めば円形の各端が切れて六角形となり、
円形切子碗
カットが少ないと隙間のある円形が並ぶ。
壁際のケース 左より、
鉢 型成形 時代は写っていない ギーラーン州アムラシュ出土
モスク用ランプ 型吹き、把手付き 10世紀 ゴルガーン出土
バラ水散水容器 型吹き 11-12世紀 ゴルガーンまたはニーシャープール出土
ビーカー 型成形 5世紀 アムラシュ出土
この中ではモスク用ランプに興味を惹かれる。イラン各地で入場したモスクでは記憶がないのだが、トルコのモスクでは、大きな金属製の輪っかに円錐形のランプをたくさん取り付けて、割合低い位置に吊り下げられていた。トルコの現在のランプ(イスタンブール、ブルーモスク)と比べて巨大で、形も違っている。
廊下に戻って反時計回りに進んだところの展示ケースにはイスラーム陶器が。
下段左には記事にしたことのある人物の彩画鉢。
サダフ・ルーム
曲面に並んだケースにイスラーム陶器が並ぶ。
彩絵鉢 10世紀 ニーシャープール出土 (上写真左より2つめ)
見込みには背を向けた2頭の大きな角を持つ草食獣の上に鳩のような鳥がいる。その間地には細かい点が無数に付けられていて、金属容器の魚々子文を模しているのかと思う。
彩絵碗 11世紀 ニーシャープール出土 (上写真左端)
植物文様か文字かわからない文様が器体を巡る。
Ceramic bowl Incised Decoration 12世紀
日本では蛍手と呼ばれている器で、中国でも製作されたが、イスラームの方が早い。
説明では型作りとなっているが、その後で透かし彫りを施し、その穴に釉薬だけが溶けて膜を張り、このように光を通して独特の器ができあがる。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』は、ミーナーイー陶器は白色またはターコイズ色の不透明釉の上に、黒、赤、茶色、青、肌色、緑のエナメル彩およぴ金彩が施されたもので、12世紀後半から13世紀初頭にかけてイランで用いられた。「ミーナーイー」とはペルシア語で「エナメル」を意味するが、これは現代の美術商が命名した通称で、当時は「ハフト・ランギー(7色、すなわち多色のものの意)」と呼ばれていたことが陶器の技術書から確認されているという。
おそらくこのミーナーイーと呼ばれる陶器が多数展示されていたが、それぞれの説明を撮影していないので、それぞれの製作時期や出土地は不明。
ポット 12世紀 ミーナーイー手 レイ出土
説明には金箔貼り付けとされている。
人物文皿 ミーナーイー手
口縁部にアラビア文字風のものが浮彫されている。
馬の背中に取り付けた輿の中に女性らしき人物が、その後ろにはお付きの者が従う。
人物文鉢 ミーナーイー手
見込みに小さく騎馬人物が描かれ、口縁部へと様々な文様が色彩豊かに描かれる。
人物文鉢 ミーナーイー手
青がきれいに発色しなかったのか、全体に灰色がかっている。
見込みには大きく楽器を奏でる二人の人物、その間にナツメヤシのような木、頭上にはカモのような鳥などが描かれ、生活の情景か、天上の楽園を表しているのだろう。
植物文鉢 ミーナーイー手
ターコイズ色の不透明釉の発色が良くないのだろう。植物文様が華麗に展開した作品なのに残念。
青地色絵人物文鉢 ミーナーイー手
緑かかった色の地に、中段には3人の騎馬人物が通っていて、上段には2人が植物をデザイン化したものを中央にして向かい合っている。それなのに、下段は同じような配置の人物が上下逆に表されているのだ。
ガラス器のケース
コップ 9世紀 型吹きガラス 切子 ニーシャープール出土 (上の写真左端)
円形切子碗とは違いかなりの薄手である。
ランプ 宙吹きガラス 10世紀 高12.5径5.2㎝ 青銅製の台と蓋付き ニーシャープール出土
動物形香水瓶 11-12世紀 ゴルガーン?
奥の作品 宙吹きガラス 高5.2口径3.7胴径3.9㎝
ガラス瓶 12世紀 型吹き 高20.7胴径10.2㎝ ゴルガーン?
胴部は型吹きで文様が浅くでき、頸部にはフリーハンドのガラス装飾を施している。
サダフ・ルームを出ると、
上写真右の扉の開いた展示ケースにはガラス器が並んでいて、
その次のラージュヴァルディーナ室入口脇左側の小ケースには
把手付き瓶 12-13世紀 型吹きガラス ゴルガーン出土
ラージュヴァルディーナ室1
ラージュヴァルディーナよりもラスター彩の器が多く展示されていた。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』では、イランでは12世紀後半から生産され、14世紀半ばまで続けられたとされているのだが、10世紀頃から、下作品のような17世紀の花瓶(カーシャーン出土)まで、器形も文様も多彩だった。
ラスター彩陶器についてはこちら
ラージュヴァルディーナ2室
ここでもガラス容器が多数展示されている。
切子細口瓶 11世紀 型吹き ゴルガーン出土 高17.0口径6.0胴径9.8㎝ (上写真左奥上段)
胴部には浅い円形切子が並んでいて、サーサーン朝以来の伝統が続いているのを思わせる。
別のケース
中上の段
切子コップ 9-10世紀 型吹き ニーシャープール出土
薄手の瓶類のケースも
そして中央のケースには、青っぽい陶器が展示されているのだが、
8点星タイル 13世紀 型成形 カーシャーン出土
ラスターとコバルトブルーの絵付け
5点星タイル 13-14世紀 型成形 タフテ・ソレイマーン出土
今までにない5点星形のラージュヴァルディーナタイル。だが、説明には、ミーナーイー手とある。
驚いたのは、
水差し 13世紀 ゴンバド・ゴルガーン?
黒彩とあるだけけだが、透彫になっている。これが水差しということは、中に容器が入った二重構造。
二重構造の水差し 12世紀 ゴルガーン出土
蔓草と人物が透かし彫りになっている。
水差し 12世紀 ゴルガーン出土
下部の鉢から蛸の足のような3本の管が出て、上で合流している。水差しよりも燭台のよう。下の容器には人物像が何体か置かれている。
装飾付容器 12世紀 ゴルガーン出土
両前肢を上げた熊のような動物の間に人間の像もある。
テーブル タイトルを写し損ねたので時代は不明
人物の描き方から、それほど古いものではなさそう。ひょっとすると、現在は博物館になっているこの建物を建造したアフマド・カヴァムが造らせたものかも。
左:ピンクと白のソーダ釉をかけた鉢 1280年 ホーマ ヴァファイエ出土
右:火山灰の釉薬をかけた瓶 1260年 ホーマ出土
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関連項目
初期のラスター彩陶器はアッバース朝とファーティマ朝
イランガラス陶器博物館でラスター彩の制作年代を遡ると
ペルシアの彩画陶器は人物文も面白い
参考サイト
テヘランのイランガラス・陶器博物館
参考文献
「ガラス工芸-歴史と現在」 1999年 岡山市立オリエント美術館
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン 展図録」 2001年 岡山市立オリエント美術館