お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2011年8月31日水曜日

1-29 スルタンアフメット廟2 タイル

スルタンアフメット・ジャーミイ(ブルーモスク)はタイルの青が有名だが、その一つ一つをじっくり見たくても、遠くて高い位置にあってよくわからなかった。
その点、スルタンアフメット廟は小ぢんまりしているので、タイルを見るのには最適な建物だ。ただし、通路が狭く見学者がすり抜けるので、その度に道を空けねばならないが。
まず、上の窓の列と下の扉の列の間には青いタイルの帯が四壁を巡っている。アラビア文字でコーランの言葉が表されているのだろう。
近くで見ると、アラビア文字の中にもところどころ赤い色が差してある。下の扉と扉の間の壁面もタイルになっていて、緑・水色・青・赤といった鮮やかな色で植物文様が描かれている。
拡大していくと赤い色がいろんな箇所で使われているのが見えてくる。
しかし、この赤い色は、16年前にトプカプ宮殿で見た「トマトの赤」と呼ばれる最盛期のイズニク・タイルの色ではない。
少し茶色がかったというか、濁ったというか。
それは様々な花で構成したこのパネルでも同じだった。
他の色は平面的だが赤だけは盛り上がっている。トプカプ宮殿で見たタイルも赤はこのように盛り上がっていた。しかし、このような濁った赤ではなかった。
他の部分を見ても赤はきれいではない。
文様帯もデザインは素晴らしいが、赤い色がいまいち。
赤が飛んでしまった箇所もある。
しかし『図説イスタンブール歴史散歩』は、唐草紋様に花柄を交えたこのタイルは、オスマン朝盛期のタイルの主産地イズニクのタイル(チニ)の優品からなる。この後、17世紀初頭以降、イズニク・タイルも衰えるから、その最後の光輝を伝えるものであるという。
この3段で一つの唐草文様を構成している。
赤い色だけでなく、植物を伸び伸びと描く線や文様の構成など、他の産地や時代にはないということで、イズニク・タイルの最盛期の最後のものが使われたと見られているのだろう。
※参考文献
「図説イスタンブール歴史散歩」(鈴木董・大村次郷 1993年 河出書房新社)