お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2012年10月9日火曜日

敦煌に石室書軒あり


今度中国に行ったら『中国石窟』シリーズの麦石山と炳霊寺を買いたいと思っていたところ、敦煌に行く機会ができた。

敦煌滞在中のある夕方、ツアーの皆さんと沙州市場に行った。

これが沙州市場の北門で、沙州夜市とも書いてあるように、夜に賑わうところだ。
その門は通り過ぎて、西の商業一条街に入った。まずドライフルーツの屋台が両側に出ていた。
交差点西側にあるのは果物屋、この狭い通りに食料品の市場があるらしいので立ち寄った。
まず、ちょっと試してみたいようなお菓子などの店がひしめき合っていたが、夕食を食べたばかりなので何も買わなかった。
そう言えば、食後に甘い物が出ることはなかった。いつも果物なので、日がたつに従って、スイーツが食べたいという思いが増していった。
今思うと、何か買っておけばよかった。しかし、何か尋ねたいような屋台には人がいないのだった。
他にしなびた野菜を売る店が道路の中央に並び、その両側に狭い通路、古い建物には様々な物を売る店舗や肉屋などが入っていた。沙州市場よりも建物は古かった。
見たことのない野菜もあって面白かったが、言葉が通じないのが残念だった。
写真中央手前の巨大な胡瓜のような野菜は何だったのだろう。
その奥に唐子のように髪を剃った子供がいた。
元の通りに戻って南へと歩き続ける。
食べ物の店が尽きると、今度は土産物の店が並んでいた。
サハラ砂漠にだけあると思っていた砂漠のバラをあちらの店でもこちらの店でも置いていたのにはびっくり。後でガイドの史さんに尋ねると、本当に出るのだそうな。
そしてツアーの一員H氏は本屋に入っていった。石室書軒とあちこちに書かれていた。

ほしい本もあったので、本屋には行ってみたいと思っていた。これは良い機会だ。
『地球の歩き方』の地図で、沙州市場の陽関東路を挟んだ北向かいに、新華書店があるのは知っていたが、新華書店はウルムチや北京でも行ったことがあり、大型書店ではあるが、美術書が揃っているというわけではなかった。それは日本の大型書店と似たようなものだ。
ここに私のほしい本はあるかな。
入ってすぐ左にレジがあり、その背後の棚には古そうな本が並んでいた。しかもかなりの専門書が。
古本屋ですか?
いや、新本屋ですよ
レジの棚の続きに開口部があって、隣の部屋に行ける。隣の部屋は土産物を置いているようだった。
続きの本棚にもすごそうな本がぎっしり並んでいて、とても1冊1冊タイトルを見ていくことができない。反対側の書棚も一緒。

奥の本棚に見覚えのあるケースに入った一連の本を発見。『中国石窟』シリーズだ。
麦積山と炳霊寺を探すとあった!えらくあっさり見つかった。

昨日見学した仏爺廟湾の本はあるだろうか?
実は旅行の日程表には「仏爺廊湾」となっていたのに、ガイドの史さんは「ぶつやびょうわん」と呼ぶので混乱していた。その上、文字は「仏爺庙湾」となっていて何のこっちゃらわからん。簡体文字の「庙」が日本の「廟」とは知らなかった。

敦煌仏爺びょう湾の西晋墓の本はありますか?
言われていることがよくわかりません
そこで地図を描いてみた。敦煌の町と空港(これだけは簡体で机場と書くのを記憶していた)それを結ぶ東西の道路、空港からすぐの位置にあるT字路の莫高窟への道。
そして莫高窟と敦煌の町を結ぶ線状の中間に「佛爺庙湾」と書いてみた。

女主人は私が何のことを言っているか、やっと理解したという顔をして、しばらくそんな本あったかなと思い出していたが、突然ひらめいた様子で2階に上がっていった。
私も後を追って二階へ。そこは莫高窟の壁画の模写に囲まれ、一階とは雰囲気の異なる空間だった。
そして物置のようになっていたところから1冊の本を探し出した、『敦煌佛爺庙湾西晋画像磚(この簡体文字は出てこない)墓』。現地では置いていなかったので、このような本が存在するとは思ってもいなかった。
日本でも中国でも、今時の本屋には期待できないことだが、自分の扱っている本を知り尽くしている。本物の本屋に久しぷりに入った。

二階にも敦煌に関する書籍が並んでいた。
平積みの仏画は今まで見たことのないものばかり。
キジル石窟の冊子を発見。
敦煌関係の論文集など、これでもかというほどに並んでいる。
階段を下りていくと正面にも本棚があって、その下の方に和綴じの本を見かけた。しかし、これは布を貼り付けた立派な函に入った豪華本だった。
左上に中国石窟の彫塑の全集などもある。自分の目的の本だけでなく、もっといろんな本を手にとってみたかった。
H氏は石室書軒に毎晩通ったそうである。私もそうすればよかったなあ。
さきほどの人が石堂書軒の女主人ではないと知ったのは後日のことだった。

西安へ発つ日、飛行機が大幅に遅れて、時間つぶしにツアーの人たちと沙州市場を再び訪れた。日の高い時間に行っても、屋台も店舗もまだ開いておらず、お茶でも飲もうと喫茶店を探すがどこも開いていない。
気が付くと石室書軒まで来ていた。先日ちらっと見かけた人が閑そうにしていた。H氏はこれが店主だという。そして本を探してくれた人が奥さんだった。

お茶飲むところはありませんか?
店長自らお勧めの店(緑州カフェ)まで連れて行ってくれたが、まだ開店していなかった。すると店主は石室書軒の前でお茶を出してくれた。

お店の前には夕方から土産物を並べる台があって、その台をテーブル代わりにしてお茶をごちそうになった。通りの西側なので、ちょうど建物の陰になっていて、その上、昨夜雨が降ったお陰で涼しく、乾いた空気が心地よいひととき。
こんなゆったりと時を過ごせることって、我々の旅行では希有なこと。
沙州市場の地図で、現在の石室書軒の位置と、昔の位置を確認している場面。
Hさんは十数年前に敦煌に来て、以前の敦煌博物館の隣にあった石室書軒に入ったのだそうな。それで、今回以前の場所に行ってみると店がなくなっていて、沙州市場を彷徨っていて、偶然現在の店を発見したとか。

次にご主人はこんな本を持ってきて、
石室書軒の載っているページを見せてくれたり、
篆刻をやっているといって、篆刻張?を開いて、みごとな篆刻の数々を見せてくれたりした。
おっちゃんは、このご主人は趣味人で、実質奥さんが本屋をやっているのだろうと言うのだが、もらった名刺で北京と蘭州に支店があることが分かった。
今度中国に行ったらまた尋ねてみたい書店だが、北京や蘭州で石室書軒を探し出せるだろうか。